2023 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子発現Profileを活用した法医実務に資する損傷受傷時期推定法の開発
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22K10611
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
池松 和哉 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (80332857)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村瀬 壮彦 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (40823315)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 受傷時期推定 / マウス / 皮膚 / Birc5 / Draxin / ヒト |
Outline of Annual Research Achievements |
法医実務における損傷の受傷時期診断は非常に重要な命題である。これまで受傷時期診断法開発の研究は行われてきたが、信頼に値する科学的受傷時期診断法は 未だ確立されていない。法医実務に関しては、受傷時期をより狭い範囲で判別可能な特異的マーカーの樹立が必要である。 RNA-Sequence法を用いてマウス損傷皮膚における受傷後0-9日の経時的・網羅的な遺伝子発現解析を行い、1000種類程度の発現に時期特異性のある遺伝子をマー カー候補として選出した。さらに、qPCR法による詳細な発現変動の検討を行い時期特異性を確認後、Western Blot法による定量的発現比較を行った。 サバイビンとして知られているBirc5は、受傷後2日に発現が増加していた。サバイビンはinhibition of apoptosis familyに属するヒト遺伝子であり、カスパーゼの活性化を阻害しアポトーシスを抑制することが報告されている。さらに、サバイビンは、細胞周期においても高度に制御され、G2/M期でのみ発現することが知られている。皮膚の損傷では線維芽細胞の増殖を伴うこと、つまり、細胞増殖が生じているためにBirc5の発現が増加したものと考える。Draxinは軸索ガイダンス分子であり、主に胚発生期に大脳新皮質、大脳腹側部、視床など広範囲に発現が観察される。今回の検討では、Draxinは皮膚でも発現が確認され、その発現は5日以降に増加していた。 この両者についてマウス損傷皮膚を対象に免疫組織学的な検討を行ったところ、時期特異的に陽性像が得られた。また、ヒト試料についても同様の検討にて陽性像が得られている。 ヒト試料を対象に組織学的発現動態を検討したところ、両者において良好な陽性像が得られた。また、時期特異的な発現動態を小規模に検討したところ、これまでの検討と同様の結果が得られている。 今後、詳細な組織学的発現動態を検討した法医学的有用性を確認したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト試料を対象に組織学的発現動態を検討したところ、両者において良好な陽性像が得られた。また、時期特異的な発現動態を小規模に検討したところ、これまでの検討と同様の結果が得られため。
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Strategy for Future Research Activity |
免疫染色にて陽性像が得られていることから、この両者については今後の大規模な検討においても進捗が滞ることはないものと考える。ヒト資料を対象にしたを大規模な検討に行い、法医学的意義を明らかにし、学会発表、学術雑誌への投稿を行う。ま た、Serpinb12、Mdkについてもマウスでの検討を終了させ、速やかにヒト試料の検討に移行したいと考えている。
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