2022 Fiscal Year Research-status Report
損傷組織における時計遺伝子発現変化に基づく受傷後経過時間推定法の開発
Project/Area Number |
22K10616
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
古川 福実 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (40156964)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野坂 みずほ 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (00244731)
石田 裕子 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (10364077)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 受傷後経過時間 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの応募者らの教室におけるマウスを用いた研究で、受傷1日後の皮膚組織では時計遺伝子の発現が正常皮膚組織と比較して著しく抑制されることを見出している。したがって、本研究は受傷直後から2週後まで経時的に損傷皮膚組織と正常皮膚組織を採取してRT-qPCR法により解析し、創傷治癒が時計遺伝子の発現の回復をもたらすのか、そして、時計遺伝子発現回復の程度が受傷後経過時間の指標と成り得るのかを検証する。また、本研究では損傷組織での時計遺伝子発現抑制が創傷治癒において果たす機能を明らかにする事も重要な目的の一つである。さらに、マウスモデル得られた結果を剖検試料に応用して、法医実務での有用性を検証する。 受傷後1日経過したマウス打ち抜き損傷部皮膚組織での時計遺伝子Per2とBmal1の発現が同じマウスの正常皮膚組織に比較して著しく抑制されることを見出した.この現象自体が損傷の生活反応になり得る可能性があるが、創傷治癒に伴う時計遺伝子の発現抑制解除の経時的変化を明らかに出来れば受傷後経過時間の指標となり得ると考える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウス皮膚損傷モデルはこれまでの多くの研究に用い、安定した結果を得ている。時計遺伝子の発現解析や時計タンパク質の発現解析についても、日常的に用いる実験手技であり十分に習熟しており、予備実験に於いても問題無く遂行できる事が確認されている。多重蛍光免疫染色およびISHについても他の研究課題において汎用しており、問題なく遂行で出来る。よって、本研究はおおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
①皮膚試料の時計遺伝子発現解析:マウス皮膚試料をISOGEN中で眼科用ハサミを用いて細片化した後、ホモジナイズしてRNAを抽出する。得られたRNA を逆転写酵素を用いてcDNAとし、Actb,Bmal1およびPer2に対するprimer setを用いてReal-time PCRを行う。各時計遺伝子発現はActbに対する相対値で表す。 ②皮膚試料の時計タンパク発現の解析:マウス皮膚試料は、Ripa buffer中で細片化した後、ホモジナイズしてタンパク抽出を行う。皮膚タンパク試料は抗Bmal1抗体と抗Per2抗体を用いたWestern blottingを行い、時計タンパク質Bmal1とPer2の発現を解析する。 ③時計遺伝子およびタンパク質の発現が変化する細胞の特定:同じマウスの損傷皮膚組織標本と正常皮膚組織標本を用いてBmal1およびPer2に対する相補的プローブを用いて蛍光ISHを行い、さらに種々の細胞マーカーに対する抗体を用いた蛍光免疫染色と組み合わせて時計遺伝子発現が変化する細胞種を特定する。時計タンパク質についてはBmal1あるいはPer2に対する抗体と細胞マーカーに対する抗体を組み合わせた2重蛍光免疫染色により時計タンパク質の変化する細胞を特定する。 ④時計遺伝子Bmal1の抑制因子であるNr1d1のagonistおよびantagonistの創傷治癒への影響解析:時計遺伝子の発現振動を駆動する第二feedback loopを構成するNr1d1はBmal1の発現を抑制する。従ってNr1d1のagonist(SR9011)の皮膚損傷部への投与はより強くBmal1やPer2の発現を抑制する事が予想される。よって、マウスに打ち抜き損傷を作成後、SR9011溶液あるいはその溶媒を毎日損傷部に塗布してBmal1とPer2の遺伝子発現をRT-qPCRで測定するとともに創傷治癒程度を比較する。同様の実験をNr1d1のantagonist(SR8278)を用いて行い、時計遺伝子発現の抑制が創傷治癒に及ぼす影響を評価する。
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