2023 Fiscal Year Research-status Report
Detection of pathogenic microorganisms from forensic materials using MALDI-TOF MS
Project/Area Number |
22K10624
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Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
藤浪 良仁 科学警察研究所, 法科学第一部, 主任研究官 (30335632)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | MALDI-TOF MS / 法科学 / 病原微生物 / 不純物 / 生活反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
炭疽菌芽胞が犯罪に用いられた可能性があり未知の白い粉が検査対象となった場合、MALDI-TOF MSの最大の特徴である迅速性を発揮して、炭疽菌芽胞と身近な同属近縁種の食中毒レベルのセレウス菌・生物農薬のカイコ卒倒病菌・納豆に含まれる枯草菌の芽胞と識別し、可及的速やかに同定する必要がある。その精度向上のためには桿菌型だけでなく芽胞型としてのデータベースが必要である。そのため本研究では、バチルス属細菌の芽胞および桿菌は、炭疽菌・セレウス菌・カイコ卒倒病菌および枯草菌の菌株を使用した。MALDI-TOF MS による細菌の同定は、Bruker社のMALDI Biotyperを用いてマニュアルに従い測定及び解析により実施した。その結果、得られた炭疽菌芽胞および桿菌のマススペクトルをMALDI Biotyperシステムの既存ライブラリを用いて解析すると、炭疽菌は芽胞でも桿菌でも高い確率で同種として検出できることが確認された。しかし、作製した炭疽菌芽胞および桿菌の形態間の類似度は、その形態が異なるように類似度が低かった。そこで今回調整した各バチルス属細菌の芽胞および桿菌のマススペクトルデータをライブラリに追加登録し再解析すると、炭疽菌芽胞は炭疽菌芽胞としてより高い同定精度を示すこととなった。また炭疽菌芽胞と同属近縁種の芽胞との類似度の高さは、セレウス菌芽胞・カイコ卒倒病菌芽胞・枯草菌芽胞の順で示された。これら同属近縁種の芽胞間の類似度が数値で明確となり、未知資料が炭疽菌芽胞であった場合に、同属近縁種の芽胞が桿菌よりも高い類似度で示されるため、炭疽菌芽胞として同定される確度を高めるものとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
初年度の昨年に急性心筋梗塞を発症し緊急カテーテル手術により救命されたが、2年目も冠動脈残りの2枝における心筋梗塞のため、それぞれ4月と8月の2度に渡り冠動脈のカテーテル手術を受けた。そのため、科研費による研究業務だけでなく、それ以外の業務がすべて遅延していた。現在は心筋梗塞再発を恐れ少しずつ体力の回復を図りながら、可能な限りではあるが少しずつ研究を遂行している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終的にはMALDI-TOF MSを用いた法科学的資料に対応した陳旧化及び不純物を含めた微生物検査の導入を目指す。そのため純培養された微生物だけでなく、微生物資料に不純物が混入しているときの特異的マススペクトルパターンを取得する。最初に微生物へ混入が想定される不純物及び保護剤単独のマススペクトルパターンを取得し、次に微生物に保護剤を添加し剤形を有した状態の生物剤のマススペクトルパターンを取得する。さらに微生物の栄養源として微生物培養用の培地だけでなく、一般流通する食材を使用した時の微生物培養液の代謝産物を含めたマススペクトルパターンも取得し比較する予定である。また可能であれば、感染時の宿主側の応答物質の検出も試みる。
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Causes of Carryover |
本研究開始当初に急性心筋梗塞発症し緊急カテーテル手術により救命され、次年度も2度に渡り心筋梗塞を発症し、その都度心臓カテーテル手術を受けている。その後も心筋梗塞再発しないように少しずつ体力の回復を図っていたため、当初の計画のように研究を推進できていない。今後はこれまで実施出来なかった分を残りの1年で研究計画に振り分け研究完遂を目指す予定である。しかし間に合わない場合は、研究期間を延長することも視野に入れている。
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