2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of the approach to ethical issues for nurses and care workers who provide elderly care in long-term care facilities
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22K10750
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Research Institution | Daiichi University, College of Pharmaceutical Sciences |
Principal Investigator |
中尾 久子 第一薬科大学, 看護学部, 教授 (80164127)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
潮 みゆき 福岡女学院看護大学, 看護学部, 講師 (40622113)
金岡 麻希 宮崎大学, 医学部, 准教授 (50507796)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 長期療養施設 / 高齢者ケア / 倫理的問題 / 強み(ストレングス) / 看護職 / 介護職 |
Outline of Annual Research Achievements |
看護・介護を提供する長期療養施設に入院・入居する日常生活に支援が必要な高齢者が増加している。高齢者は身体・心理・社会的に加齢変化が加わるため、心身の虚弱、認知症状、意思表示困難などの特性があり、日常のケアや医療における意思決定時の説明や確認の不足、自由な行動をとどめる抑制等の高齢者の尊厳が損なわれる倫理的問題が生じていると考えられる。しかし、長期療養施設は種類や数が多く、対象者の実態は捉えにくい現状がある。また、高齢者施設で高齢者の支援を行うスタッフの倫理的問題の捉え方についても職種や経験などの属性で違いがある可能性がある。本研究では、高齢者の倫理的問題を捉え、その対応に関して高齢者の強みを活かした支援を通してQOLの向上、倫理的ケアを検討したいと考える。 令和5年度は、長期療養施設で高齢者ケアを提供する看護・介護職の倫理的問題へのアプローチについての解説および看護職のとらえる高齢者のストレングスに関する総説論文を公表した。看護職のとらえる高齢者のストレングスについては、個人のストレングスとして、意志、身体能力、知識や技術、柔軟さなど、環境のストレングスでは、社会関係、資産、安心な環境、活動・憩いの場等があり、個人のストレングスと環境のストレングスが相互に関係していると考えられた。事例にみる高齢者のストレングスでは、問題状況に対応する医療・ケアを考える過程で、意欲、身体能力、性格や人柄、過去の職業や趣味などの強みが見出され、状況の振り返りを通して対応策をチームで実践することで良い結果を得ることができていた。高齢者ケアでは、高齢者の言動や小さな反応を見過ごさず、高齢者を「力を持った存在」として考える視点が必要と考えられた。 また、令和5年度の後半以降、長期療養施設の看護職・介護職を対象とした面接調査を開始しており、そのデータを逐語録に起こして質的なデータ分析を開始している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに長期療養施設で高齢者ケアを提供する看護・介護職の倫理的問題へのアプローチについて解説をまとめ、高齢者のストレングスに関して文献検討を進めて、研究班員間で高齢者のストレングスに関する知見を共有し、総説論文として公表できた。面接調査においても、様々な背景の対象者がいるため、面接開始時や終了後に振り返りを行い、研究班員で情報共有しながらより良い調査研究をめざして研究遂行を進めている。面接調査は施設側の承諾を得られた施設の看護職・介護職を対象に順次行っており、今後も引き続き進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に沿って、長期療養施設に入院・入居する日常生活に支援が必要な高齢者をケアする看護職・介護職の面接調査を継続する。現在までに研究協力が得られた施設の対象者に面接調査を進めているが、施設の事情で断られることもあり、今後も継続的に施設に研究協力を依頼する。既に得られたデータに関しては逐語録におこし、質的にデータ分析を開始している。情報管理に注意しながら研究班員間でデータ分析・検討を進めている。この結果をもとに、看護職・介護職の倫理的問題へのアプローチについて検討を進めたいと考えている。以上の過程で得られた成果は関連する国内外の学会などで公表を行う予定である。
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Causes of Carryover |
令和5年度に入ってコロナ感染症の位置づけの変更(5月以降)に伴い、多くの施設で感染対策は緩和されたが、高齢者の長期療養施設においては、継続的に慎重な対応を行っている施設が多く、位置づけの変更後も施設やスタッフの対応が大きく変化することはなく余裕が少ない状況が持続した。令和5年度の後半以降から徐々に面接調査に協力いただける施設や看護職・介護職が増えたが、当初計画より少なかった。また、本研究に関連して情報収集や成果報告などの目的での学会参加を計画していたが、他の業務との関係で現地参加が困難な例もありZOOMでの参加に変更等を行った結果、旅費などの支出が少なくなった。 令和6年度は、看護職・介護職を対象とした面接調査をさらに進め、研究班員間で得られたデータの分析、考察を通して研究成果をまとめ、関連する国内外の学会などで成果公表を行う予定である。また研究成果をまとめて公表する際に部分的に研究補助者の雇用を計画しており、その費用に充てる計画である。
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