2022 Fiscal Year Research-status Report
看護労働の歴史を継承するオーラル・ヒストリーのアーカイブズ構築の検討
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22K10768
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
田中 幸子 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (20286371)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川上 裕子 亀田医療大学, 看護学部, 准教授 (20612196)
川原 由佳里 日本赤十字看護大学, 看護学部, 教授 (70308287)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | オーラル・ヒストリー / 看護労働 / 歴史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は1960年代~70年代の看護労働史に焦点を当て、どのようにして古い価値観を打破し、全寮制から通勤に切り替え就労継続を貫いてきたのか、院内保育所の設置につながってきたのかをオーラル・ヒストリーを用いて明らかにし、看護労働の歴史的継承を目指して看護労働に関するオーラル・ヒストリーの体系的なアーカイブズの構築を検討することを目的とするものである。 それには、歴史学の作法、オーラル・ヒストリー研究の方法論、意義を押さえていく必要があると考え、文献検討を行った。すでに研究者らは医史学会誌、日本看護歴史学会誌をもとにオーラル・ヒストリー研究の倫理的配慮を分析しており、一般の歴史学、社会科学の歴史的研究と比較を試みた。一般の歴史学、社会科学では、医療・看護歴史研究ほどには厳格な匿名性、倫理的配慮を要するものではなかった。しかし、R.クリフォード(2021)のホロコースト最年少生存者に対するオーラル・ヒストリーによる記録では大人による様々な聞き取りそのものが対象者の成長発達に影響していることから多面的な配慮の必要性が指摘されていた。同時に、社会に残された歴史文書は、行政・管理に関わる者による意図的な記録が多く、それだけでは歴史の真実を残しているとはいえない。その時代に生きた当事者でなければ知りえない経験をオーラル・ヒストリーによって明らかにできることが示唆された。御厨貴は、「オーラル・ヒストリーそのものが資料を超えた作品になる(御厨貴,2019:オーラル・ヒストリーに何ができるか)と述べており、看護労働史のオーラル・ヒストリーが、看護歴史に新たな知見を提供しうる可能性が確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
文献検討はかなり進めることができたが、コロナ禍にあり対象者が高齢であることから、聞き取りの計画を立てることが困難だった。感染状況に配慮しながら、対象者の協力が得られる時期を選んで、感染予防に留意しながら聞き取り調査を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
医療の労働組合を通じて、研究協力者に協力を依頼する。調査にあたっては感染状況に留意し、対象者が不安にならないよう配慮する。同時に1945年以降の労働組合の歴史を分析し、労働組合の動きと組合員である看護師の活動とを合わせながら分析を行う。労働組合の歴史に関する資料はすでに確保しているので、資料に基づいて関係者への聞き取り、さらなる資料収集を行っていきたい。調査時は、匿名性を確保し、他の歴史研究でも実施されている個人への配慮も行いながら実施していきたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍にあり、文献は幅広く収集し分析できたが、対象者への聞き取り調査ができなかったことが大きい。次年度は、医療労働組合を通じ、調査対象者に研究趣旨を説明し、聞き取り調査を行う。その際に、謝金が必要となる。また、収集した労働組合資料の不足を補うため、労働組合関係者への聞き取り調査、さらなる資料収集を行っていく予定である。
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