2022 Fiscal Year Research-status Report
がんとの共生社会を目指したがん看護専門看護師による地域がん緩和ケアモデルの構築
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22K10906
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Research Institution | Meio University |
Principal Investigator |
吉澤 龍太 名桜大学, 健康科学部, 助教 (70925792)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玉井 なおみ 名桜大学, 健康科学部, 教授 (80326511)
木村 安貴 名桜大学, 健康科学部, 上級准教授 (90812917)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | がん性疼痛 / 疼痛体験 / セルフマネジメント / 教育的介入 / 自己効力感 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、高齢化社会に伴いがん患者も増加していく中で、がんとの地域共生社会を目指し、がん患者が在宅でも安心して質の高い地域に根づいた緩和ケアモデルを構築することであり、“がん看護専門看護師の役割を活かした持続的でかつ活用可能な地域共生緩和ケアモデルの構築”をすることである。地域で暮らす在宅がん患者の抱える課題として、疼痛マネジメントが不十分な現状であった。疼痛マネジメントにおいては、患者自身がセルフマネジメントできるよう教育的介入が有効であることが国外論文では明らかであった。しかし、教育的介入を有効に実施するには、患者がどのように痛みを体験し、認識しているかを明らかにする必要があるが、国内論文ではほとんどみられなかった。 そのため、在宅がん患者への教育的介入に関する理論的枠組み構築の示唆を得るため、在宅がん患者の痛みの認識と体験の様相を明らかにすることを目的として文献レビューを行った。国外論文、国内論文で19件の論文を対象とした。在宅がん患者の痛みの体験には、多様な要因で持続的に変化する痛みで制御困難な耐え難い疼痛体験と生活の折り合いをつけた痛みへの対処行動を行っていた。痛みの認識には、痛みに対するこれまでの対処行動と痛みの体験から得られる自己効力感の認識が分岐点となり、人生の喪失というネガティブな認識と人生の再構築というポジティブな認識に分かれることが明らかになった。在宅がん患者には、制御困難な痛みに対し,家族介護者や医療従事者と協働して、自己効力感が得られる薬理的・非薬理的な対処行動を強化する教育的介入の必要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献レビューから、「制御困難な痛み」「痛みの性状の変化が激しい」「鎮痛薬を使用しても薬効を実感できない」などの特徴から、がん性疼痛の中でも突出痛が課題であることが予測された。また、在宅がん患者の疼痛マネジメントにおいて、痛みの消失が目標ではなく、在宅がん患者が自己効力感を実感しながらセルフマネジメントを行えることが重要であると明らかになった。これらの結果は、国外の在宅がん患者の痛みの体験と認識を明らかにしたレビュー論文と比較しても類似した内容であった。しかし、この文献レビューで使用された論文19件中、18件が国外論文であり、日本人特有の痛みの認識を明らかにした内容ではない。また、医療用麻薬系鎮痛薬に対する懸念が疼痛マネジメントの障壁となっていることはほとんどの文献で共通しているが、日本と国外との医療用麻薬系鎮痛薬の捉え方や価値観は大きな違いがあることが予測される。日本の特徴をふまえた在宅がん患者の痛みの体験と認識を明確にする必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
日本人の特徴をふまえた在宅がん患者の痛みの体験と認識を明らかにし、在宅がん患者の痛みの問題や課題を明確にしていく。現在の制度上、訪問看護師が介入している在宅のがん患者を対象とした場合、進行がん・終末期がん患者がほとんどであることが予測される。地域共生社会における在宅がん患者の痛みとの共存という観点から、比較的、病状が安定しており、ADLや意思決定が自立している患者を対象とすることが望ましいと考える。そのため、外来通院するがん患者を対象として、痛みの体験と認識、その課題を明らかにしていく。 さらに現在、がん性疼痛の突出痛の定義は明確ではなく、医療的な診断やがん患者への教育的介入にあたり、統一された定義が必要である。在宅がん患者の痛みのセルフマネジメントにおいて、突出痛への対応は必要である。がん患者と共有できる突出痛の定義、または概念を明らかにする。
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Causes of Carryover |
2022年度の文献レビューによって、 日本人の特徴をふまえた在宅がん患者の痛みの体験と認識を明らかにする必要がある。在宅から通院する外来がん患者を対象とし、がんの診療を行っている医療機関でのアンケート調査、またはインタビュー調査を行う。骨転移があり日常生活の中で突出痛が生じていることが予測され、オピオイドなどの鎮痛剤を服用している患者を対象とする。 さらに現在、がん性疼痛の突出痛の定義は明確ではなく、医療的な診断やがん患者への教育的介入にあたり、統一された定義が必要である。突出痛に関する文献レビューを行っていく。
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