2022 Fiscal Year Research-status Report
「認知症という告知」を受けた軽度認知症者のための看護支援モデルの開発と評価
Project/Area Number |
22K11119
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Research Institution | Nagano College of Nursing |
Principal Investigator |
有賀 智也 長野県看護大学, 看護学部, 講師 (10708069)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
細田 江美 長野県看護大学, 看護学部, 講師 (10290123)
渡辺 みどり 長野県看護大学, 看護学部, 教授 (60293479)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 認知症という告知 / 軽度認知症者 / その人らしい生活 / 気持ちや思い / 看護ニーズ / 看護支援モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,「認知症という告知」を受けた軽度認知症者が,その人らしく生活していくことを支えるための看護支援モデルを作成し,その実用可能性を検討することである.告知後の認知機能がある程度保たれている認知症者に焦点を当てた研究は少ない現状にある.そのため,認知症者の告知,思い,経験などについて報告されている文献を検索し,その内容について検討した.文献検討の結果,「認知症という告知」を受けた認知症者は,孤独,不安,ショック,肩身の狭さ,偏見などの精神的苦悩を抱えていることが明らかになったが,疾患と共に生活することについてどのように感じ,気持ちや思いがどのように移り変わってきたのか,そしてこの先どのように移り変わっていくのかという気持ちや思いの移り変わりの様相については明らかにされていなかった.また,「認知症という告知」を受けた認知症者は,他者と繋がりたいという思い,嬉しいといった感情,新しいことに取り組む前向きな姿勢,地域での仕事といった社会貢献など自分自身の意思を表現しながら生活していることが明らかになった.さらに,「認知症という告知」を受けた認知症者に対して,認知症者の意思決定支援,心身の健康の保持,社会参加への支援,尊厳の保護という看護が必要であると明らかになった.しかし,認知症者が生活していくうえでどのような看護を必要とするのかという看護支援について言及したものはなく,それに基づいた看護支援モデルも見られなかった.これらのことより,軽度認知症者が社会の中でその人らしく生活していくことを支えるために,当事者が認知症に罹患しながらも,どのような気持ちや思いを持ちながらどのように暮らしているのか,そしてどのような看護を必要としているのかを把握し,そこから看護ニーズを明らかにし,それに対応した当事者の生活を支えることが可能な看護支援モデルが必要であることが確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,地域で生活している軽度認知症者へインタビューを実施する.その前段階として,認知症者の告知,思い,経験などについて報告されている文献を検索し,その内容について検討した.文献検討から,軽度認知症者が社会の中でその人らしく生活していくことを支えるためには,当事者が認知症に罹患しながらも,どのような気持ちや思いを持ちながらどのように暮らしているのか,そしてどのような看護を必要としているのかを把握し,そこから看護ニーズを明らかにし,それに対応した当事者の生活を支えることが可能な看護支援モデルの作成が必要であることが確認された.また,文献検討を実施することにより先行研究の内容を把握することができた.それらの先行研究を参考にして,インタビューガイドの作成にも至った.また,認知症疾患医療センターに研究協力の依頼をした結果,1つの病院から研究協力の承諾を得ることもできた.よって,次段階として,インタビューガイドに沿い実際に軽度認知症者へインタビューを実施していく予定である.同時に,複数の認知症疾患医療センターに研究協力を依頼することも継続していく.よって,現在はおおむね計画通りに研究を進めることができている.
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Strategy for Future Research Activity |
現在,1つの認知症疾患医療センターから研究協力の同意を得ることができた.今後,研究協力の承諾が得られた病院へ,研究の趣旨および協力依頼の説明文書と研究参加承諾の用紙と返信用封筒が入った患者用封筒を,軽度認知症者へ渡すことを書面および口頭で依頼していく.そして,研究参加承諾の用紙の返送があった軽度認知症者へ電話し,再度研究参加の意思を確認する.その後,研究対象者と面談の日時を設定し,直接面会しつつ文書と口頭で研究協力の同意を得る.このような手順で研究協力者となる軽度認知症者を探していく.研究協力の同意が得られた軽度認知症者を見つけることができた場合は,その軽度認知症者に対し,インタビューガイドに沿った半構成面接を実施しデータを収集していく.軽度認知症者に対し半構成面接を実施しながら,同時に複数の認知症疾患医療センターに研究協力を依頼し,多くの認知症疾患医療センターから研究協力の同意が得られるように,今後も研究協力の依頼を継続していく.そして,複数の軽度認知症者へ研究協力を依頼し,より多くの軽度認知症者から研究の同意が得られるように働きかけていく.これらのことについて,年間を通し実施していく.
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Causes of Carryover |
令和4年度は,1つの認知症疾患医療センターから研究協力の同意を得ることができた.しかし,研究対象となる軽度認知症者を募ることはできていない.そのため,軽度認知症者へインタビューが実施できていない状況である.よって,軽度認知症者へのインタビューを実施するために,居住地へ移動するための旅費,インタビューに協力いただいたことに対する謝金などを支払う状況に至っていない.そのために,次年度使用額が生じることとなった.次年度は,複数の認知症疾患医療センターから研究同意が得られるよう依頼を続けていく.また研究協力の同意が得られた病院の協力を得て,研究対象者となる軽度認知症者を募集する予定である.それに基づき,3~6名程度の軽度認知症者へのインタビューを計画している.
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