2023 Fiscal Year Research-status Report
中小運送ドライバーのメンタルヘルス支援における運行管理者の支援的関わりの研究
Project/Area Number |
22K11272
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
島本 さと子 東海大学, 医学部, 講師 (10759179)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
錦戸 典子 東海大学, 医学部, 教授 (10172644)
三橋 祐子 東海大学, 医学部, 准教授 (10580813)
中谷 淳子 産業医科大学, 産業保健学部, 教授 (60341525)
吉野 純子 東海大学, 医学部, 准教授 (50290036)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 中小企業 / 陸上貨物運送業 / メンタルヘルス / ラインケア / 管理監督者 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は大きく3つの研究を進めている。 1つ目は、2022年度から実施していた中小運送業の運行管理者を含む管理監督者10名を協力者としたラインケアの明確化の質的調査である。協力者全員のインタビューを終え、現在は論文投稿中である。途中経過として第96回日本産産業衛生学会での学会発表をしている。研究結果としては、中小運送業のラインケアとして6つの項目が抽出されたが、そのうち4つは、メンタルヘルスケア指針に言及されている範囲と考えられたが、2つは中小運送業の特徴と考えられた。後者の2つは、運送業の給与形態や運行管理者であること等が影響しており、優先度も高い内容であることが示唆された。 2つ目には、中小運送ドライバーが求めるラインケアについての質的研究であり、15名のドライバーに協力いただいた。現在9名データ分析を終了し、会社・上司に求めるケアとして、【話す、きく、応える】【仕事ぶりを認め、任せる】など7つのカテゴリーが抽出された。今後収集した残りのデータの分析を進め、前述の管理職が行うラインケアの内容と比較検討する予定である。2024年度に学会発表、論文化を進める予定である。 3つ目は、英国HSEで2008年開発されたStress Managemnt Competency tool(66項目)(以下、SMCIT-J)の翻訳化後の信頼性・妥当性の検討のための調査を行った。中小運送業におけるラインケアの具体的な項目の明確化のため、既存尺度からの類似性を検討する目的で行った。原版に沿い、労働者579名を対象にネット調査を実施も、原版の4因子構造では十分なモデルの適合度が得られなかった。改めて探索的因子分析により59項目5因子が抽出された。この翻訳版も、2024年度に、規模、業種別の違いを含めた詳細な分析を進め、更にはツールを用いた運送業調査を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
要因は2つある。1つ目は、中小運送業の管理監督者対象の質的調査において、対象者が見つからなかったことである。そのためデータ収集終了が9月となり、その後の信頼性・妥当性検討も含め時間を要した。また、英国HSEのSMCIT-Jの信頼性・妥当性検討についても、倫理審査と、委託先との調整に時間を要したため、2023年度内に詳細分析を終了することができなかった。これらのことから今後実施予定の2研究への進捗に影響が出ている状況である。 2024年度早々に詳細分析と倫理審査を進め、年度内に予定している2研究が終了できるよう進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度では大きく2つの調査を実施する。 1つ目は、8月までにSMCIT-Jを用いて、SMCIT-Jと中小運送ドライバーのメンタルへルスの関連を調査する。この調査では、事業場規模別も把握するため、対象は中小規模事業場だけでなく、比較的規模の大きい運送業も対象に調査を行う予定であり、対象者抽出の難しさから、ネット調査を用いて行う予定である。 2つ目は、11月頃までに中小運送業の管理職を対象にSMCIT-Jを含むラインケア行動の関連分析を行う。この調査ではトラック協会等の協力得て、対象者となる中小運送業管理監督者もしくは運行管理者等管理職を200名程度集めることを目標とする。 その他には、2023年度に実施した中小運送ドライバーを対象とした質的研究の論文化を行う予定である。 2025年度では、2024年度までの知見を集め、管理監督者向けの教育ツールの検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
2023年度に行ったSMCIT-Jの信頼性・妥当性の検討のネット調査費用が予定より少なく済んだため繰越が生じた。この繰越金額は、2024年度の中小運送ドライバーのストレス調査の費用に充てる予定である。この中小運送ドライバー調査は、計画が遅れ気味であり、また次の調査のために早々に実施し、結果をトラック協会等へ示すことを考えている。もともと項目数も多く、加えて早期に結果を得る必要があるため、ネット調査を活用予定としており、費用が掛かるため、そこに充当する見込みである。
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