2022 Fiscal Year Research-status Report
選択的自己多血小板血漿の筋内投与による筋損傷修復機序の解明
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22K11284
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
宮武 和正 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (00777435)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古賀 英之 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (30594080)
辻 邦和 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, ジョイントリサーチ講座教授 (20323694)
関矢 一郎 東京医科歯科大学, 統合研究機構, 教授 (10345291)
片桐 洋樹 東京医科歯科大学, 東京医科歯科大学病院, 非常勤講師 (50795028)
中村 智祐 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 准教授 (90725201)
中川 裕介 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 寄附講座准教授 (60822666)
片倉 麻衣 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (30930549)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 疼痛の非薬物治療 / 筋損傷 / 再生治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
筋損傷(いわゆる肉離れ)は主にスポーツ現場で問題とされることが多く、その損傷の程度によってリハビリテーションやスポーツ復帰までの期間が判断されている。従来の保存治療では消炎鎮痛薬の投与、拘縮を予防するためのリハビリテーションが主体となっている。しかしながらこれらはすべて対症療法であるため、筋組織の再生を促し、復帰までの時間を短縮するものとはなっていない。自己多血小板血漿(PRP)は血小板に含まれる様々なanabolic factorを血液から分離することで得られる。一般のクリニックでも遠心機さえあれば施行できるほど簡便であることが最大の利点である。また自己血漿のみしか使用しないことから安全であり、倫理的な問題点もないことも知られている。その効果としては PRP自身がgrowth factorのカクテルであるため細胞増殖、組織修復、抗炎症作用など様々な効果が報告されている。その利点と効用から筋損傷の分野においても、疼痛改善や競技復帰の早期化、腰痛改善につながることが報告されている(Bernuzzi GらBlood Transfus 2014、Shiga らBone Joint Nerve 2020)。しかし、臨床的に一定の効果が認められている一方で、基礎的な分野における詳細な機序の解明は未だ不明なままである。その原因としては先ほど利点であると述べた簡便さがゆえに、臨床応用がされてしまい基礎的なメカニズムの解明が遅れてしまっていることがあげられる。我々は過去に関節症分野に対するPRPの基礎的メカニズムを解明し、PRPの抗炎症作用と鎮痛作用を明らかにした。今回は筋損傷に対しても同様に動物モデルを用いた検証を行うことでPRPの効果を検討することを目的とした。当該年度ではPRPの精製並びにラット筋損傷モデルの確立を行った。現在当該ラットの組織学的評価を行い、PRP投与による効果を確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PRPの精製は既に本研究室では確立されている方法であり、筋損傷モデルも以前当院の研究室で行ったものである。ゆえに、組織学的評価やバイオメカニクス評価においても新しく手法を立ち上げる必要がない。よって順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
PRPは一般的に臨床応用されている精製方法に基づき、白血球の濃度によって分類された以下の3種類のPRPを利用する。(pure-PRP, leukocyte poor(LP)-PRP, leukocyte rich(LR)-PRPの3種類)。本実験では薬物によって作成した筋損傷モデルラットを作成したのち、増殖因子、サイトカインの濃度の異なる3種類の同種PRPもしくはPBS100µlを損傷した筋肉内に投与する(各群N=6を予定)。単回投与で効果が不十分な場合は複数回投与も検討項目に組み入れる。筋再生の指標となる筋力測定としてtwitch forceとtetanic forceを測定する。 (ii) 各種PRPの疼痛抑制効果を組織学的に解明する。 筋再生過程を見るため、筋損傷後1週、2週でラットを屠殺後に、腓腹筋と腓腹筋支配領域の第5腰椎脊髄後根神経節(DRG)の採取を行う。筋組織再生をHE染色と免疫組織学的染色(炎症と組織修復に関わるM1,M2マクロファージ分画、血管新生を反映するα-SMAや筋分化の転写因子因子であるPAX7)を用いてコントロールと比較する。 (iii) 得られたメカニズムから肉離れ治療に最適なPRP組成を明らかにする 全項目の実験で同定した標的に対するPRPの生理作用を検討するため、PRP投与によって変化する筋肉内のmRNAを検討する。RNA-seqを用いて、PRP群とコントロールと比較して発現が変化している因子の解析を行う。候補因子が同定できれば、pathway解析を利用してPRPの代わりに候補タンパクを関節内に投与し実験(1)と同様の解析を行うことも予定する。
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Causes of Carryover |
免疫染色などの試薬に関しては当該年度で使用する予定であったが、当該年度では免疫染色を施行しなかったため、やや費用に差異が生じてしまっている。次年度で当該年度で使用しなかった試薬を使用する予定であり、概ね問題がないと考えている。
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