2022 Fiscal Year Research-status Report
高齢女性顎関節症モデルにおける重症化と疼痛発症の機序と抑制
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22K11308
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
市川 博之 東北大学, 歯学研究科, 教授 (20193435)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 関節円板 / 神経線維 / PGP9.5 / SCN7A / ヒト |
Outline of Annual Research Achievements |
閉経後の女性における顎関節症は重度になることが多い。本研究では、このメカニズムとその予防や治療方法の開発を目的として実験が行われている。顎関節症における疼痛や炎症には神経が関連することが以前から知られている。今年度は卵巣摘出ラットに歯の早期接触を生じさせ顎関節や神経分布の変化を調べる前に、まずヒトの女性と男性の関節円板の形態や組織、神経分布について調べることとした。 試料は東北大学歯学部の解剖実習で使用した高齢の女性と男性のご遺体8体から関節円板を摘出した。肉眼的には高齢の女性と男性で大きな差異は認められなかった。むしろ大きさや厚さ、硬さなど個人差が大きいと思われた。ヘマトキシリンーエオジン染色によりマクロファージ様の細胞も観察され、一部の関節円板では炎症が生じていると考えられた。神経細胞や神経線維のマーカーであるprotein gene product 9.5 (PGP9.5)、無髄の神経におけるシュワン細胞のマーカーであるsodium voltage-gated channel alpha subunit 7 (SCN7A)に対する抗体を用いた免疫染色を行ったところ、関節円板の前側肥厚部や後部に反応が観察された。PGP9.5及びSCN7A陽性神経線維は主に血管周囲に観察された。また太い血管に伴走する神経束もPGP9.5及びSCN7A陽性であった。さらに一部のPGP9.5及びSCN7A陽性神経線維は血管や神経束とは関係なく、独立して直線状及びループを描くような構造をしていた。これらの神経線維は痛みを伝達する自由神経終末である可能性が示唆された。PGP9.5及びSCN7A陽性神経線維の分布とマクロファージ様細胞との関係については今後の研究課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は卵巣摘出ラットに歯の早期接触を生じさせ顎関節や神経分布の変化を調べることはできなかったが、それらを明らかにする前に、まずヒトの女性と男性の関節円板の形態や組織、神経分布について調べることとした。その結果、炎症に関連するマクロファージ様細胞の存在と神経線維の分布に関する結果を得た。卵巣摘出ラットにおける顎関節症の組織や神経分布の変化については来年度に実験する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
卵巣摘出ラットにおける顎関節症の組織や神経分布の変化については来年度に実験する予定である。
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Causes of Carryover |
実験動物であるラットについては卵巣摘出の外科手術や早期接触の手法を確認したが、これらの手法を用いた顎関節症重症化モデルラットを用いた研究や分析は次年度 に行うこととした。
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