2022 Fiscal Year Research-status Report
サル脳損傷後の大規模神経回路可塑性における治療的リハビリテーションの効果
Project/Area Number |
22K11318
|
Research Institution | Tsukuba International University |
Principal Investigator |
山本 竜也 つくば国際大学, 医療保健学部, 講師 (60724812)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 脳の可塑性 / リハビリテーション / 脳損傷 / 機能回復 / 神経回路 / 巧緻動作 / 第一次運動野 / 運動前野 |
Outline of Annual Research Achievements |
中枢神経系損傷による運動機能障害が、残存するシステムにより機能代償されるメカニズムを理解する。第一次運動野は、大脳皮質と脊髄を結ぶ皮質脊髄路ニューロンを豊富に含む領域である。この領域に損傷を受けると運動麻痺が生じる。しかし、このような麻痺は回復することがある。マカクサルを用いた行動・脳領域・分子レベルの解析により、第一次運動野や皮質脊髄路を損傷した後にリハビリ訓練を行うと、手指の把握運動(特に手の巧緻性)が回復すること、その背景に大脳皮質運動関連領域(特に腹側運動前野)による機能代償があることが報告された。 これまでの研究では、申請者は神経回路レベルの解析により、腹側運動前野から小脳核(特に室頂核)へと下降性に投射する経路が第一次運動野損傷後の機能回復時に増加することを国際学術雑誌にて報告してきた(Yamamoto et al., 2019, JNS)。また、頭頂間溝野へと向かう大脳皮質間投射においても、腹側運動前野ニューロンは可塑的な変化が生じることを国際学術学会などで報告してきた(Yamamoto et al., 2021, 44th Annual Meeting of the JPN Neuroci Soc etc.)。これらの知見は、損傷を受けた経路自体が再生しなくても、損傷による直接的な影響を免れた他の大脳皮質運動関連領域が代償領域として機能することにより、運動機能が回復することを示唆するものである。 上記研究過程において、マカクサルと齧歯類では可塑性に関連する小脳区分マーカーの発現パターンが異なることを発見し、小脳における分子発現の特徴から霊長類の進化的適応が解ける可能性を示唆した(Yamamoto et al., 2022, The 100th Anniversary Annual Meeting of The Physiol Soc of JPN etc.)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、第一次運動野損傷後にリハ訓練を実施しない自然回復マカクサルに着目し、これまでに解析を進めてきた「リハ訓練実施群」や「健常群」におけるデータとの比較により、脳損傷後に伴う大規模な神経回路可塑性に与えるリハ訓練の効果を検証するものである。段階1として、「リハ訓練実施群」の組織化学実験を行い、これまでに検証してきた小脳核や頭頂間溝野以外にも、腹側運動前野投射先が可塑的に変化する領域を検証することを掲げていた。現在は新たに大脳皮質下領域に向かう投射経路の可塑性に関する解析を開始させ、解析対象範囲の切片を準備している。 頭頂間溝野へと向かう連合性の大脳皮質間投射における神経回路可塑性に関して、第一次運動野損傷後に腹側運動前野ニューロンが増加する頭頂間溝周辺領域を対象に蛍光多重染色実験を実施したところ、腹側運動前野ニューロンが機能的なシナプスを形成していることを確認した。現在は、概ね論文に必要なデータが揃った状況であり、国際学術雑誌への投稿に向けた論文作成を開始した。 これまでの研究過程において、マカクサルと齧歯類では小脳区分マーカーの発現パターンが異なることを発見した。本研究成果の詳細については、国際学術雑誌に現在投稿中である(under review)。 概ね当初の研究計画通りに進んでいるため『(2)おおむね順調に進展している』と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在投稿中の「マカクサルにおける小脳区分マーカーの発現パターン」に関する論文、及び、現在投稿準備中の「頭頂間溝野へと向かう連合性の大脳皮質間投射における神経回路可塑性」に関する論文の迅速な受理を目指す。 また、「大脳皮質下領域へと向かう投射における神経回路可塑性」に関する解析を進め、その成果を国際学会や国際雑誌にて報告する予定である。今後は、解析に必要な切片が揃い次第、免疫染色実験を行い、可視化させた腹側運動前野ニューロン投射の定量解析を進める。さらに、自然回復マカクサルの把握動作解析を行うために、解析に必要な磁気式モーションセンサーの数を確保し、本解析システムを運用できるように準備を進める。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が148,493円生じた。現在、論文投稿中であり、本予算は翌年度分として請求した助成金と合わせて論文投稿/掲載費に充てる予定である。
|