2022 Fiscal Year Research-status Report
膝前十字靱帯断裂後の自然治癒靭帯強靭化に向けたメカニカルストレスの探索と検証
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22K11372
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Research Institution | Saitama Prefectural University |
Principal Investigator |
高柳 清美 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 客員教授 (20274061)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金村 尚彦 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 教授 (20379895)
村田 健児 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 助教 (30792056)
森下 佑里 東京家政大学, 健康科学部, 期限付助教 (60880440)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 前十字靭帯 / 自然治癒 / 伸張ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
前十字靭帯断裂後に生じる脛骨前方不安定性を制動することによって靭帯の連続性が再獲得されることが動物モデル(前十字靭帯自己治癒モデル)で報告されたが、臨床応用に向けては課題が多く治療選択肢として一般化されていない。なかでも、正常前十字靭帯と比較して50%程度である治癒靭帯の力学強度不足は、非接触損傷を主な受傷機転とする前十字靭帯損傷では喫緊に解決すべき課題であり、治癒靭帯の強靭化が求められている。
本年度、前十字靭帯自己治癒モデルで実施する脛骨前方不安定性制動に加えて膝関節屈伸運動を外固定により制限したところ、治癒靭帯の力学強度がさらに低下するという知見を得た。膝関節屈伸運動に伴い前十字靭帯に対しては引張ストレスに代表されるメカニカルストレスが作用することから、靭帯治癒過程におけるメカニカルストレスが力学強度に影響すると推察し、前十字靭帯由来線維芽細胞を用いたin vitro研究を実施した。結果としてメカニカルストレスを付与した線維芽細胞からは靭帯を構成するⅠ型およびⅢ型コラーゲンmRNA発現量が増加し、靭帯の弾性に寄与するエラスチンも同様に発現量の増加を示し、細胞レベルではメカニカルストレスは靭帯治癒過程における靭帯の強靭化に正の役割を果たす可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画に対して、順調に進んでいる
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Strategy for Future Research Activity |
治癒靭帯の力学強度が正常前十字靭帯の50%程度であった前十字靭帯自己治癒モデルにおいては、脛骨前方不安定性のみを制動していた。すなわち、膝関節屈伸運動に伴うメカニカルストレスが治癒前十字靭帯に対して加わっていたと考えられる。一方で脛骨前方不安定性も膝関節屈伸運動と同様に前十字靭帯に対しては引張ストレスを含むメカニカルストレスとなりうるが、膝関節屈伸運動と比較して大腿骨および脛骨の前十字靭帯付着部距離をより開大させる。つまり、脛骨前方不安定性を制動しなければ靭帯の連続性は再獲得されないことから、連続性獲得以前においては前十字靭帯付着部を開大させるような骨運動は前十字靭帯自己治癒に対して負の役割を果たす可能性が高い。そこで我々はACL連続性獲得以降におけるメカニカルストレスが靭帯強靭化に関与すると仮説立て、メカニカルストレスをACLに加える“時期”に着目した以下の検証を進めていく。
1.ACL連続性再獲得時期の断定方法の検証: 通常、ACL自己治癒モデルラットでは関節制動後約2週間で靭帯の連続性が再獲得される。この2週間近辺に焦点を当て、組織学的解析および超音波エコー解析に合わせた体液(関節液、血液)マーカー分析から、非侵襲的なACL連続性再獲得指標を決定する。 2.ACL連続性再獲得後のメカニカルストレスが靭帯強靭化に及ぼす影響: ACL連続性再獲得時期を対外的に判断できる指標を決定した後に、ACL連続性再獲得以降におけるメカニカルストレスが靭帯強靭化に関与するという仮説に対して、関節固定群、定量的関節運動群の群間比較から検証を行う。
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Causes of Carryover |
ほぼ計画通り利用することができた。差額分については、組織サンプル作成のスライドガラスに利用していく。
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