2022 Fiscal Year Research-status Report
肢運動に伴う皮質運動領野の活動性増強メカニズムの検証
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22K11375
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
森 大志 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 教授 (50301726)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 大脳皮質 / 脳梁 / 経頭蓋磁気刺激 / 運動誘発電位 / 歩行運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳機能画像法による研究が可能になり,ヒトが行う歩行運動時の脳活動を可視化することが可能になった.また最近では,歩行時の脳活動を脳波で記録することも可能となり,二足歩行が大脳皮質運動領野(運動野)の活動性を増加させることを示す研究が報告されている.これらの研究は運動野への入力や運動野からの出力が歩行運動によって増加することを示す重要な研究と言える.しかし,この活動性の増加を皮質内や皮質間の制御メカニズムの観点から検証した研究はない.我々の実験的研究から一側肢による歩行様肢運動が同側の運動野の活動性を増加させる可能性があることが見出された.この結果はこれまでの歩行運動時に運動野の活動性が増加する研究結果と類似するものであった.そこで本研究では,歩行様下肢運動に伴う同側運動野の活動性の増加機序を明らかにすることとした.研究仮説として,皮質内抑制の脱抑制が同側運動野の活動性増加の要因とし,これを検証する.そのために運動中に同側運動野を条件刺激と試験刺激で構成される刺激(二連発磁気刺激)を実施する.条件刺激から試験刺激までの時間を調節することで記録されるMEP振幅の大きさが変化する.振幅が小さくなれば同側運動野内で皮質内抑制が発現している可能性があり,逆の場合は脱抑制が生じている可能性が考えられる.現在,条件刺激は閾値の80%強度,試験刺激は閾値の120%強度として刺激条件の設定を行っている.脳梁の萎縮により歩行運動機能が低下したことを示す研究があることから,本研究は脳梁を介する左右運動野間の活動性調節が歩行運動に寄与しているかを考察することを可能にする.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒトとの接触を避けて実施することが困難な本研究を感染者数が増加した令和4年度に実施することは極めて困難であった.また使用予定の研究機器の故障・修理のために研究を実施できない期間があった.そのため,刺激条件の設定のために時間を要しているのが現状であり,検討可能なデータ数を得ることはできていない.また,当初想定していた以上に課題の運動により頭位が上下に移動することで安定して最適刺激点を刺激できず,信頼できるMEPを記録することができないという問題が発生した.後者については研究協力者の頭部と刺激コイルを機械的に密着させる方法を考案できたことから改善しているが,進捗状況は遅れていると考える.今後は感染対策を継続しながら令和5年度の目標を達成できるよう努める.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究を推進するために最優先すべきことは,刺激条件(条件刺激と試験刺激間時間)の確立である.これまでに条件刺激と試験刺激間時間を5ミリ秒以内とする刺激条件と5ミリ秒以上にする刺激条件で検証している.これは他の先行研究を参考にしているが,記録されるMEP振幅は低下する場合や増加する場合などある.この原因の一つに刺激点を一定にできないという技術的な問題が考えられた.これを解決するために刺激方法の変更および運動課題の調整を行う.後者については,令和5年度の実験課題に歩行様肢運動以外に歩行時に観られる肢位(静止)での脳活動を記録することを追加する.具体的には足関節の背屈と底屈をやや強調させた肢位を想定している.これらはほかの研究者や技術者との相談や問い合わせの中で提案されたものであり,今後も様々な協力を得ながら本研究を推進する.また,これまでは国内外での学会・研究会への参加が様々な要因で制限されてきたが,今後は研究推進のための情報収集を目的とした活動を増加させる.
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Causes of Carryover |
実験方法の修正・調整,感染対策,研究活動制限および機器故障などのために前年度は十分な実験機会を設けることができなかった.その中で,磁気刺激用コイル固定装置は過去に利用した物品をリサイクルすることで作成することができたため固定装置作成用具材購入予算は使用していない.一方,使用予定していた動画撮影用カメラが修復不能となったため新規に購入することを計画している.また実験条件の設定に時間を要しているため,データ記録ができていない.そのため,データ保存用のハードディスク,データ解析のための人件費は次年度に利用したい.国内外の学会はオンサイトでの開催も再開されたが,感染流行下での国内学会等への参加も控えた.今後は積極的に学会参加し,情報収集や成果発表を行いたい.これらから予算を適切に使用する.
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