2022 Fiscal Year Research-status Report
投球フォームの個人特性を考慮した上限投球数決定法の開発
Project/Area Number |
22K11478
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
神事 努 國學院大學, 人間開発学部, 准教授 (20387616)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ピッチング / バイオメカニクス / 投球障害 / 内側側副靭帯 |
Outline of Annual Research Achievements |
野球の投手が投げる1日当たりの投球数、もしくは一定期間内での投球数に上限を設定することで、肩や肘のオーバーユースを回避し障害を予防できると考えられている。しかし、肘の投球障害はオーバーユース以外に、投球中の内反トルク(外反ストレス)の大きさが影響していることから、画一的に投球数だけを制限したとしても、多くの選手の障害を予防することはできない。投球障害の予防効果を高めるためには選手の投球フォームの個人差を考慮したテーラーメード型の上限投球数を決定する必要がある。本研究では、大規模なデータベースを作成し、個人の投球フォームを考慮した投球数決定方法を開発することを目的とする。2022年度はデータを蓄積し、基準となるデータベースを作成することが主な内容であった。 6つの競技レベル(中学生、高校生、大学生、社会人、プロ、一般)で102名のデータを取得した。光学式三次元動作分析装置VICON VANTAGEを使用し、反射マーカの画像信号の三次元座標を得た。記録には専用カメラ14台を使用し、サンプリング周波数は1000Hzに設定した。国際バイオメカニクス学会が推奨する身体セグメント座標系と関節座標系(Wu et al., 2005)を定義するために、身体特徴点42カ所に反射マーカを貼付した。リンクセグメントモデルにおける近位端の関節力、関節トルクは、遠位末端のセグメントからニュートン・オイラーの運動方程式を解くことにより算出した。セグメント質量、セグメント重心位置、セグメント重心まわりの慣性モーメントは、阿江ら(1996)の推定係数を用いて算出した。すべての被験者において肘関節の内反トルクの算出は終了している。球速が高い投手は、内反トルクも高くなる傾向は認められたが、球速に依存しない投手も存在した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記載したとおり、1年目はデータを蓄積し、基準となるデータベースを作成することが主な内容であった。102名の被験者のデータを取得することができ、計画通りに研究を実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
球速が高い投手は、内反トルクも高くなる傾向は認められたが、球速に依存しない投手も存在した。肘関節は屈伸のみが可能な一軸性の蝶番関節であるため、特に肘関節90°屈曲位のMER付近では、肘関節の内外反は肩関節の内外旋運動を強く反映するはずである。しかしながら、40m/sを越える投球速度の投手であっても、肘の内反トルクが非常に小さい投手がおり、これら現象を力学的に説明する必要がある。上腕と前腕の2リンクからなる2重振り子モデルを解析し、前腕へのエネルギー流入に対する内反トルクの貢献について検討する。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、人件費・謝金を計上していたが、被験者への謝金が必要なくなった。次年度は、データ分析の人件費として使用を予定している。
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