2023 Fiscal Year Research-status Report
投球フォームの個人特性を考慮した上限投球数決定法の開発
Project/Area Number |
22K11478
|
Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
神事 努 國學院大學, 人間開発学部, 准教授 (20387616)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | ピッチング / バイオメカニクス / 投球障害 / 内側側副靭帯 |
Outline of Annual Research Achievements |
野球の投手が投げる1日当たりの投球数、もしくは一定期間内での投球数に上限を設定することで、肩や肘のオーバーユースを回避し障害を予防できると考えられている。本研究では、選手の投球フォームの個人差を考慮したテーラーメード型の上限投球数を決定するために、大規模なデータベースを作成する必要がある。2022、2023年度はこれらデータベースを作成することが主な実施内容であった。これまでに、6つの競技レベル(中学生、高校生、大学生、社会人、プロ、一般)で220名のデータを取得した。光学式三次元動作分析装置VICON VANTAGEを使用し、反射マーカの画像信号の三次元座標を得た。記録には専用カメラ14台を使用し、サンプリング周波数は1000Hzに設定した。 肘関節の障害に寄与することが報告されている内反トルクにおいて、時系列データを観察すると、ほぼすべての被験者が二峰性の波型になっていた。そのピークは肩関節の最大外旋位(MER)付近とボールリリース(REL)付近で認められ、17%の被験者がREL付近において内反トルクの値が大きかった。また、MER付近での内反トルクは、ボール速度と正の相関関係を示したが、REL付近での内反トルクはボール速度との間に相関関係は認められなかった。ボール速度が大きい投手は、肘関節の内反トルクも大きくなることが先行研究によって報告されていたが、REL付近で内反トルクがピークを迎える投手においては、当てはまらないことが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記載したとおり、2年目はデータを蓄積し、基準となるデータベースを作成することが主な内容であった。1年目と合わせて220名の被験者のデータを取得することができ、計画通りに研究を実施することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
肘関節の内反トルクが二峰性になることが明らかになった。REL付近で発生する内反トルクは、ボール速度に依存せず、この内反トルクの大小が障害へ直接的に影響を与える可能性がある。2024年度はこのトルクの発生メカニズムについて明らかにし、どのような動きが影響するのかを明らかにする。また、MER付近で発生する内反トルクにおいては、ボール速度と有意な正の相関関係が認められた一方で、直線回帰において正の残差や負の残差を詳細に分析していくことで、肘に負担の高いフォームと低いフォームを明らかにする。
|
Causes of Carryover |
当初の計画では、人件費・謝金を計上していたが、被験者への謝金が必要なくなった。次年度は、データ分析の人件費として使用を予定している。
|