2023 Fiscal Year Research-status Report
2型糖尿病における臨床応用可能な個別化運動指導法の創出
Project/Area Number |
22K11488
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
中西 修平 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (70372183)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 握力 |
Outline of Annual Research Achievements |
2型糖尿病の治療は食事療法、運動療法を基盤とし、必要に応じて患者の病態や並存疾患を考慮した薬物を選択する。しかし運動療法については、指導法や評価法に関する具体的な指標も不足しており、実臨床で十分に行えていない。こうした背景から、我々は握力および腹囲に注目し、それらが運動指導の個別化に有用かの検討を行っている。 なかでも握力は測定が簡便なうえ、運動予備能との正の関係が知られており、糖尿病の運動指導への応用が期待されるが、実臨床下のデータは未だ十分でない。腹囲はその指導に負の影響を及ぼすと考えられるが、両者の関連は明らかではない。そこで、本年度は当科医師派遣先のクリニックとの共同研究として、2型糖尿病患者の握力および腹囲測定を行い、その診療経過を前向きに観察する研究を開始・継続している。本年度はその解析結果の一部として、高齢2型糖尿病患者を対象とした横断研究から、握力は血糖管理決定因子の一つであることを糖尿病学会総会および中国四国地方会で発表し、その後さらに症例数を増やしたうえで英語論文として報告した(Geriatr Gerontol Int 2024)。さらには観察研究から、握力が経過中の血糖改善因子となること(J Diabetes Investig 2024)を明らかにした。本研究結果は来年度の糖尿病学会総会でも発表予定である。 以上の結果から、握力は臨床応用可能な体格指標であり、さらには運動指導の個別化にあたり有用であることが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は症例数を増やすべく関連施設を共同研究先とし、観察研究を行うことに成功した。さらに、横断並びに観察研究で握力と血糖管理の関係を明らかにできた。実際の臨床現場で得られた握力と血糖管理指標の関係を明らかにした報告は検索した限りは見当たらず、本報告が初であると考える。すなわち、2型糖尿病における臨床応用可能な指標として握力測定の重要性が明らかとなり、これを基にすれば運動指導の個別化に応用可能と考えられた。 以上から、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
握力が運動指導の個別化に有用であることが示唆された一方で、握力が弱い群は常に血糖改善が鈍い傾向にあるのに対し、腹囲および内臓脂肪についてはそれらの多寡が観察中の血糖改善の決定因子とならないことがわかった(現在解析中の未発表データ)。言い換えれば、握力を運動予備能のサロゲートマーカーとし、その維持あるいは向上を運動指導の指標とすることに一定の妥当性があるが、脂肪蓄積のサロゲートマーカーとして一般的に使用されている腹囲や内臓脂肪は血糖改善との関連が弱く、運動指導の効果を判定するための指標とするのには限界があるということである。したがって、2型糖尿病患者の運動指導において、腹囲のみならず全身の骨格筋量や体脂肪量を詳細に検討・勘案した新たな指標の探索が課題として浮き彫りになってきた。この点については、腹囲の握力および運動療法との関連のみならず、新たな研究課題となると思われ、来年度の課題として取り組む必要性を感じた。
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Causes of Carryover |
上述の如く年度内に2本の論文を投稿し、最終的にアクセプトとなったが、両論文とも掲載料支払いが3月となり、手続き上4月以降の払い出しとなったため、次年度使用額が生じたものである。したがって、全額4月以降に速やかに使用される予定である。
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Remarks |
新たな視野を広げ、他施設との共同研究の可能性を探る目的で、2023年12月に岡山県で開催された第28回岡山リサーチパーク研究・展示発表会にて当該研究の趣旨を発表した(演題名「2型糖尿病治療における効果的な運動指導の探索」)。
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