2022 Fiscal Year Research-status Report
回転動作のバランス制御機構の解明~床の滑りやすさに対応する関節運動の検討~
Project/Area Number |
22K11553
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
井村 祥子 東京都立大学, 人間健康科学研究科, 助教 (30586699)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | バランス / 動力学的分析 / 角運動量 / 摩擦係数 / コンピュータシミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
床面と足底との摩擦係数の大きさは、床から身体に作用する前後左右方向の力に影響を与える。このため、バランス制御を必要とするスポーツや芸術的身体運動では床の滑りやすさに応じた身体制御が求められる。床の滑りやすさに応じて行われる体肢・体幹の運動を調べるためには、転倒状態をも分析する必要があるが、転倒・非転倒状態を作り出す実験は難しい。よって摩擦を自由に調整できるコンピュータシミュレーションモデルを用いて身体運動を生成し力学的機構を調べる方法が有効である.本研究の目的は摩擦による回転作用を組み込んだ回転動作のシミュレーションモデルを構築し,摩擦の大きさに応じて調整される関節運動とその力学を調べることである. 本年度はシミュレーションモデルを作成するために,3回転以上回ることができる男女5名のバレエダンサーのピルエットの様子をモーションキャプチャーシステムと床反力計を用いて記録した。また、一軸張力センサーを用いてダンサーが着用していたバレエシューズと床反力計の表面との摩擦力を測定した。 これまで収集したデータを用いて動力学的分析を行った結果、頭部と体幹の回転位相ずれを生み出す動作が回転時の角運動量ベクトル調整に影響を与えることが推測された。 また、安定的に3回転を行うことができた女性ダンサーのデータを用いて、シミュレーションモデルの作成を行った。足の動きに応じて床から身体に作用する床反力を生成する様子を、両足部に仮定した粘弾性バネの復元力によってシミュレーションした。体幹以外のセグメントの運動は、実験で得られた関節運動学の入力によって決定した。現在はシミュレーションモデルの評価関数を試行錯誤しながら、これらのバネの粘弾性係数の決定のための最適化計算を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シミュレーションに必要なデータは取得しており、今後は解析とシミュレーションが主体となる。このため、コロナや被験者探しといった社会的な影響がなくなるため、解析等に集中できる。 現在は3回転できる実験データを用いて1回転までは確実に回転可能な粘弾性バネ係数の範囲はほぼ探索できている。 また、計算ソフトは並列化計算が可能なfortranを選んだため、モデル作成が終われば比較的速い計算速度で解析することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
3回転まで回転可能な粘弾性バネ係数を求めたのち、肩関節1自由度、股関節3自由度、膝関節2自由度、足関節3自由度、体幹3自由度、頭部3自由度で関節角度の時系列データに変化を与える。現在の摩擦係数を基準に、摩擦係数が大きくなった場合と小さくなった場合で成功試技の条件を満たす関節運動の変化を抽出する。
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Causes of Carryover |
購入予定であったソフトウェアが高額であったため、購入を慎重に検討するためにまずは無償提供されているソフトウェアを使用して研究を進めたため。
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