2023 Fiscal Year Research-status Report
回転動作のバランス制御機構の解明~床の滑りやすさに対応する関節運動の検討~
Project/Area Number |
22K11553
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
井村 祥子 東京都立大学, 人間健康科学研究科, 助教 (30586699)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 回転運動 / コンピュータシミュレーション / クラシックバレエ |
Outline of Annual Research Achievements |
23年度はピルエットの全身モデルの作成に注力した。ピルエットで3回転を行ったダンサーのモーションキャプチャーデータを参照し、全身を17セグメント(頭部・上胴・下胴、上腕・前腕・手、大腿・下腿・足・爪先)に分けモデル化した。床反力は、足部に貼付したマーカーの動きを参照し、それぞれの位置に粘弾性バネを仮定して入力した。 年度上半期は足部を爪先部とそれ以外の部分に分けずにシミュレーションを行い、その成果を国際学会で発表した。下半期は足部を爪先部とそれ以外の部分に分け、床反力データの入力をさらに詳細にして検討した。 上半期のモデルでは、床の滑りやすさと同義である動的・及び静的摩擦係数を変化させた場合に、下肢各関節角度をどのように変化させて3回転を成立させるかを検討した。その結果、摩擦係数が小さい滑りやすい床では回転前に主に屈伸運動が深い試行では3回転が成立していた。 下半期のモデルでは、1.5回転までのピルエットは成功した。上半期のモデルに比べて爪先部のマーカー位置が足の後部と分離して動くため、床反力をより実験データに近づけることができた。しかし参照元の実験データ同様に3回転を行えるモデルは完成していない。 1.5回転までのピルエットは、試行時間中に実験データよりもバランスが崩れることはないが、バランスを保ったまま回転が止まってしまう。これは初期に獲得する角運動量が小さいことが原因であると考えられる。角運動量は床と足との摩擦力を利用して、回転前に全身に外力を作用させて獲得する。摩擦力は垂直抗力の大きさに依存しているため、摩擦力が小さくなる状況を改善する必要がある。摩擦係数を調整する以外に、床反力を実験データよりも少し大きめに設定するという工夫も試みる必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上半期のモデルでは実験データに近い力学入力を果たせなかったため、モデルの改変を行った。このことにより、多くの時間を割いてきた粘弾性バネ係数を再び検討することになり、二倍の時間を必要としている。ただし、モデルを改変したことにより、床反力データ及びその圧力中心位置もより実験データに近づけることができた。このため、今後計画している関節運動動力学データの計算において実験データにより近い結果がでることが期待でき、結果的にはより良い成果につながると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き足部を爪先部と後足部に分けたモデルで展開していくが、床反力データを模すための粘弾性バネの想定位置を爪先部に一つ増やすことを考えている。理由は、実際の試行を改めて確認したところ、爪先立ち時に足部が底屈位にありながら外転位にあるため、他のスポーツでの足の使い方と異なり、爪先部の接地部位がかなり限局的になっていることが予想されるためである。 このため、現在のデータで計算が間に合わないようであれば新たに実験を行い、モデルを完成させていく予定である。
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Causes of Carryover |
当該研究の申請時に予算立てした金額よりも、実際の交付総額が低かったため、購入物品全体の見直しを行った。その中で摩擦係数を取得するためのシステムについて、購入するのではなく自分で構築することにしたため、安価に収めることができた。そのため、最終年度での執行予算が大きく残ったと考えられる。 モデルの改変を行ったことで、もう一度実験を行い検証する必要性が生じた。この点において、使用していなかった人件費及び測定消耗品を使用するため、次年度で全ての予算を執行することになると考えている。
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