2022 Fiscal Year Research-status Report
遠隔を想定した運動強度に対する動機づけの共調整がポジティブ感情に及ぼす影響
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22K11638
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
藤田 勉 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (30452923)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 動機づけ / 自己調整学習 / 共調整学習 / 遠隔 / 健康運動 / 体育 / スポーツ / 身体教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度の研究では,共調整学習を応用した運動課題の実験を実施した.実験では,教示的な運動強度に対する動機づけの共調整がポジティブ感情に及ぼす影響を検討した.実験の内容は,コンセプト2社のモデルDを使用したローイングエルゴメーター運動であった.運動中,被験者は心拍センサーを装着して運動課題を遂行した.心拍水準60%前後で安全にできる時間を設定する必要があるため,予備実験を繰り返し,無理のないテンポで5分程度の運動を設定した.ポジティブ感情の測定には,快感情尺度とリラックス感尺度を使用した.実験群では遠隔を想定しており,プロジェクタースクリーン上に再生されるパートナーの録画映像と共に運動した.統制群にはパートナーを設定しなかった. 実験群と統制群のデータを比較したところ,心拍数に交互作用が見られ,実験群は統制群よりも運動前から運動後の心拍数上昇の程度は小さかった.また,快感情尺度の得点については両群に違いはなく,両群共に運動前よりも運動後の方が高かった.リラックス感には交互作用が見られ,実験群は統制群よりも運動前後でのリラックス感の低下の程度が小さかった.これらのことは,実験群は統制群よりも運動前後の心拍数の上昇が抑えられ,リラックス感が維持されたことを示している. 快感情については運動前よりも運動後の方が向上したものの,両群に違いは示されなかったが,心拍数は実験群よりも統制群が上昇し,リラックス感は実験群よりも統制群の方が低下した.これは,心拍数を高めなくても快感情が得られること,また,リラックス感を維持できることを映像パートナーとの運動で実現したことを意味している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度の研究では,教示的な運動強度に対する動機づけの共調整がポジティブ感情に及ぼす影響を検証した.年度前半は,運動強度,運動の継続時間,運動のペースを試行錯誤しつつ,時間をかけて予備実験を繰り返した.その甲斐もあり,年度後半からの本実験では順調に進めることができた.研究結果は当初の予想と若干異なっていたが,むしろ,今回の実験では予想よりも良いデータが得られた.
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は,相対的な運動強度に対する動機づけの共調整がポジティブ感情に及ぼす影響を検証する.相対的な運動強度とは,設定した心拍水準(%HRmax)(最大心拍数=220-年齢)で運動することである.被験者は,iPadに表示された心拍水準をリアルタイムでモニタリングし,60%前後で運動するようペースを調整する.年度前半の予備実験で心拍水準がiPadで確認しやすいよう方法を決め,年度後半に本実験を行う.実験群も統制群も心拍水準をモニタリングするが,実験群はモニター画面に再生されるパートナーと共に運動する.統制群にパートナーはない.実験結果は,リラックス感について統制群も実験群も運動前より運動後が高いが,快感情については,実験群は運動前より運動後が高く,統制群は運動前後で変化なしと予想する.一方,実験群は,心拍水準のモニタリングに加えて,パートナーのモニタリングによる運動強度の共調整により,共通目標の達成経験が得られ,快感情とリラックス感が高まると考えている.
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Causes of Carryover |
旅費や人件費等を使用しなかった分,古くなった心拍センサーや遠隔で実験するための器材購入等に充てたところ,報告通りの未使用額となった.研究は計画通りに進んでいる.次年度使用額は実験補助アルバイト雇用費や新たな遠隔機材等に充てる予定である.
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