2022 Fiscal Year Research-status Report
抗炎症に基づくフレイル予防の食教育・改善プログラムの開発と地域実装
Project/Area Number |
22K11697
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
孫 輔卿 東京大学, 未来ビジョン研究センター, 特任講師 (20625256)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯島 勝矢 東京大学, 未来ビジョン研究センター, 教授 (00334384)
仙石 愼太郎 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (00401224)
田畑 夏子 東京大学, 未来ビジョン研究センター, 客員研究員 (20872550)
七尾 道子 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (40876091)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | フレイル予防 / 食事性炎症指数 / 慢性炎症 / フレイルサポーター / グループワーク / 地域実装 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は老化基盤である「慢性炎症」に基づき食・栄養を総合的に評価し、外因である食・栄養からフレイル及び老年疾患への影響を理解した上で、主体的な抗炎症食・栄養の実践を促す食教育・改善プログラムの開発を目的とする。 今年度は地域の「フレイルチェック」プログラムに注目し、その担い手であるフレイルサポーターとともに食・栄養を評価し、意識・行動変容を促す実践プログラムをco-design/co-developmentすることを目的とした。フレイルチェックは参加高齢者と対面交流の形で身体機能計測と質問票によりフレイルの兆候に気づき、フレイル予防の重要性を学び、お互いに自分事とするプログラムである。このようなフレイルチェックから担い手のサポーターが食・栄養に対する助言や誘導ができるプログラムを開発する。 具体的にはフレイルサポーターを対象に6回のグループワークを通して、食・栄養の実態から、食と免疫力の関係、抗炎症作用の食材を自分の食生活に取り入れる方法などを主体的にみつけ、実践できる内容で意識・行動変容を試みた。延べ66名のフレイルサポーターが参加し、慢性炎症に基づく食・栄養の評価も行いながら、抗炎症食の実践に対する意識を高めた。特に抗炎症作用を有する食材のなか、食物繊維に注目して、抗炎症作用の機序や多く含有している食材、摂取推奨量などの知識を伝えながら、自分の食生活に取り入れて摂取する方法をグループワークで共有した。最終的には、自分の免疫力向上のメニューを考案してもらい、フレイルチェックの参加者に食と免疫力の関係を伝えながら、おすすめのメニューを伝えるシミュレーションを行う内容とした。参加者の基本属性、満足度、意識・行動変容のステージ変化などをまとめてグループワークの評価を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は初年度として倫理申請、体制づくりやグループワークの目的・内容の設計を行った。文献調査を行い、食品摂取の多様性と免疫力向上の食・栄養は正の相関があること、 腸内健康による免疫力の向上、免疫力向上食・栄養による腸内健康・フレイル予防、 食品摂取の多様性とタンパク質の摂取も正の相関があることを整理した。 またモデル地域において、地域の担い手であるフレイルサポーターを対象にグループワークを実施するのにあたって、担当行政と数回の打ち合わせを行って調整した。参加したフレイルサポーターは延べ66名であり、年齢は56~80歳であった。具体的な実施プログラムの内容としては、意識・行動変容のレベルを踏まえてStep0-Step5までで構成した。STEP0:自分の食生活・食行動を知る。STEP1:食と免疫力の関係を理解する。STEP2:免疫力を高める食形態:「食物繊維」に着目した多様な食品を摂取する。STEP3:食物繊維について知り、食生活に取り入れる。STEP4:タンパク質と食物繊維を組み合わせた自分ならではの食実践方法を見つける。 実践する。STEP5:免疫力向上(フレイル予防)につながる食実践アイディア集をまとめる。最終的には、アイディア集の成果物を、フレイルサポーターが地域において、またフレイルチェックの場において、利活用できるものとして作成した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は基礎研究として、食事性炎症指数のエビデンスを確立する予定である。まず、マウスモデルを用いた炎症誘導食がサルコペニア、認知症を引き起こす機序を解明する予定である。具体的には、炎症誘導食(例:低タンパク食、低脂肪食)による炎症誘導マウスモデルを確立し、食事由来の炎症誘導による腸内細菌叢の構成細菌の変容・異常や炎症基盤老化関連疾患(サルコペニア: 下肢ワイヤー固定による廃用筋萎縮)、認知症:SAMP8マウスなど)への影響およびその機序解明を行う。さらに抗炎症食(例:高食物繊維食)による炎症及び疾患の抑制効果機序を明らかにする。 また、大規模高齢者コホート研究(柏スタディ)での第1回目栄養調査(2014年)から2021年第2回目栄養調査の結果を用いて、7年間の縦断解析による炎症誘導性食がサルコペニアやフレイル、また認知機能低下に及ぼす影響を食事性炎症指数の縦断解析で検討する予定である。さらに、サルコペニアやフレイルの改善が認められる高齢者の食事内容から食事性炎症指数の変化値を把握し、可逆性に基づくフレイル予防や改善の数値設定の根拠を示す。 地域実装においては、令和4年度の活動成果や基礎研究の結果を踏まえて、産学官民連携のリビングラボ手法で地域高齢者とともにフレイル予防の食教育・介入プログラムを考案・開発する。多様な地域の担い手を対象として、免疫力向上や抗炎症食の実践に対する意識・行動変容を促すグループワークを行いながら、実際の活動に波及する効果までの検証する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は新型コロナの影響もあり、地域実装の研究推進が計画通りに進められなかった。そのため、次年度の研究計画を現状に合わせて調整し、地域実装の内容を盛り込んで実施を試みることとなった。
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Research Products
(17 results)