2022 Fiscal Year Research-status Report
内臓脂肪の遺伝子プロファイル解析による肥満心筋症の進展機序解明
Project/Area Number |
22K11703
|
Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
齋藤 聖多郎 大分大学, 医学部, 助教 (60631380)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 肥満心筋症 |
Outline of Annual Research Achievements |
肥満心筋症とは,肥満患者に認められる心筋症で,心筋リモデリングと収縮能低下によって拡張型心筋症病態を呈するが,糖尿病や冠動脈疾患などの肥満に伴う二次的な病因によってでは説明のできないものとされる.同程度の肥満度にもかかわらず肥満心筋症を起こす患者と起こさない患者が存在し,肥満心筋症の進展メカニズムを解明するため,肥満心筋症をきたす肥満患者の内臓脂肪組織の遺伝子プロファイルの特徴とその影響を本研究では検討する. われわれは以前にヒト心外膜脂肪中の炎症性サイトカイン(IL-6,MCP-1,TNF-α)の含量が多いほど,隣接する心房筋の線維化が高度であることを報告している.脂肪細胞の量のみならず質の変化により,アディポサイトカインが変化して,心筋に内分泌的遠隔作用をきたし,肥満心筋症が惹起されるという仮説をもとに,現在は,まず同意が得られた予定開胸心臓外科手術の患者全例の余剰心外膜脂肪,縦隔脂肪,皮下脂肪を回収し,その中で,糖尿病や冠動脈疾患の合併のない患者群を術前心機能(左室駆出率(LVEF))と,体重による肥満症の有無により分類し,CT画像による心外膜脂肪・縦隔脂肪・皮下脂肪の定量的比較,脂肪組織の組織学的観察,血清バイオマーカーの比較検討を進めている.回収した脂肪組織はRNA抽出しており,今後マイクロアレイの評価をもとに,低心機能症例で発現が変化した遺伝子がコードする分泌可能因子を抽出し,心筋細胞・心筋線維芽細胞への内分泌学的影響を検討する予定である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初は肥満患者の外科手術時の余剰内臓脂肪組織を単離し,その遺伝子プロファイルを解析することを予定していたが,想定以上に肥満外科手術を施行する患者で心機能低下を認める患者が少数であった.このため,まず同意が得られた予定開胸心臓外科手術の患者全例の余剰心外膜脂肪,縦隔脂肪,皮下脂肪を回収し,その中で,糖尿病や冠動脈疾患の合併のない患者群を術前心機能(左室駆出率(LVEF))と,肥満症の有無により分類し,CT画像による心外膜脂肪・縦隔脂肪・皮下脂肪の定量的比較,脂肪組織の組織学的観察,血清バイオマーカーの比較検討を進めている.
|
Strategy for Future Research Activity |
予定開胸心臓外科手術で回収された余剰心外膜脂肪,縦隔脂肪,皮下脂肪を体重および術前心機能で分類し,回収された脂肪組織から,内臓脂肪由来前駆細胞を回収,またRNAを抽出しており,今後マイクロアレイ解析を検討している.心機能低下例で高発現または低発現している遺伝子を同定,qPCRでvalidationする.発現が変化した遺伝子がコードする分泌可能因子を抽出し,対象患者血清検体でその分泌因子の濃度をELISAで測定する.心機能別で有意差があった場合,それぞれの脂肪組織の培養上清を用いて,ヒト培養心筋細胞および心筋線維芽細胞の培養により,活性酸素種(ROS)や炎症シグナル,線維化に関わる分子の発現産生を評価する.
|