2022 Fiscal Year Research-status Report
老化に伴い発現する脂質代謝異常とその生理学的役割の解明
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22K11718
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Research Institution | Nagasaki International University |
Principal Investigator |
石原 知明 長崎国際大学, 薬学部, 講師 (90724013)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 老化 / 脂質 / 脂質代謝酵素 / オートファジー / 細胞老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体に存在する多様な脂質分子種の質的・量的な制御は、生体恒常性の維持に重要な役割を果たしている。加齢に伴い脂質代謝が変化することが知られているが、どのような脂質分子に変動が見られるのか、そしてその変動が個体の老化や加齢関連疾患の発症においてどのような影響を与えるかについては十分に明らかになっていない。本研究では、老化および加齢関連疾患に関わる脂質代謝系の変化とその役割について分子レベルで明らかにすることを目指す。本研究により、老化と脂質代謝変動の関係の全体像が明らかとなり、新しい老化制御法の確立を通じて健康寿命延長の実現につながることが期待される。 これまでに申請者は、老化に関連する脂質代謝シグネチャーとして、加齢に伴い変動する脂質分子種を複数見出している。そこで本年度はまず、これらの脂質分子種の中から、オートファジー異常や細胞老化に代表される老化関連の表現型に影響を与える分子のスクリーニングを行った。解析対象となる脂質(あるいはその前駆体)や、脂質代謝酵素の阻害剤を用いて、培養細胞内の脂質環境をコントロールし、オートファジーや細胞老化を評価した。それぞれの老化関連表現型について、スクリーニングの条件と整えて評価を行ったところ、検討を行ったグリセロリン脂質・エーテルリン脂質・スフィンゴ脂質の中からオートファジーや細胞老化に影響を与える分子を複数見出す事ができた。現在、活性が見出された脂質分子種が老化関連の表現型に影響を与える分子メカニズムの検討に進んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで見出している老化に伴い変動した脂質分子種のうち、いくつかの脂質分子についてはオートファジーや細胞老化に対する影響が認められ、作用メカニズムの検討を進めている状況である。一方、LC-MS/MSを用いて脂質を検出する分析系の構築については、予想よりも進捗はやや遅れている状況である。総合的に考えると、概ね順調に進展しているものと評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、オートファジーや細胞老化に影響を与える脂質分子の作用メカニズムについての検討を行っている。まず、オートファジーについては、脂質分子がオートファジーを阻害していることを示唆するデータが得られているため、まずはこの点を明らかにするためにオートファジーマーカータンパク質の免疫染色やオートファジー検出プローブを用いた検討を進める。さらに、脂質の局在に着目しながらオートファゴソーム形成やリソソーム活性に与える影響について、解析していく予定である。また、細胞老化については、脂質分子が細胞老化を抑制することを示唆するデータが得られていることから、マーカー遺伝子の発現やレドックス状態に与える影響について検討を進める。さらに、脂質に対する特異的抗体を作成するための準備を進めており、脂質分子のターゲットとなる分子の同定につなげたい。加えて、代謝酵素の発現に着目して、老化に伴い脂質量が変動するメカニズムの解析も進めていく。候補となる代謝酵素(老化に伴い発現が変動することを確認している)については、すでにcDNAを作成している状態であるため、分析系の準備を整えて解析を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
計画的に予算を使用することができ、ほぼ予定通りの使用額となった。 一部を次年度に繰り越したが、翌年度の消耗品費用として使用したいと考えている。
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