2022 Fiscal Year Research-status Report
若年成人高コレステロール血症の遺伝的素因解明からの心血管病予防の健診スキーム確立
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22K11723
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡崎 佐智子 東京大学, 保健・健康推進本部, 助教 (30648720)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 高コレステロール血症 / 若年成人 / 動脈硬化性疾患 / 健康診断 / 全エクソームシークエンス |
Outline of Annual Research Achievements |
家族性高コレステロール血症(FH)ヘテロ接合体は、冠動脈疾患(CAD)ハイリスクで、頻度の高い遺伝性疾患であるが、世界的に低診断である。早期診断・早期治療が望ましく、若年のうちに的確に診断するためのアルゴリズムの確立が喫緊の課題である。申請者は、若年成人(18-30歳)を対象とした健診由来の高LDL-C血症患者のコホートを立ち上げ、「成人(15歳以上)FHヘテロ接合体の診断基準(日本動脈硬化学会:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版)」の感度について検討した。診断基準は、基本的には、高LDL-C血症(未治療時のLDL-C≧180 mg/dL)、腱黄色腫などの身体所見、FHあるいはCADの家族歴(2親等以内)などであるが、若年成人では、身体所見と家族歴の感度が非常に低いことが明らかとなった。一方、若年高LDL-C血症では、FHが高頻度(LDL-C≧160 mg/dLの約36%がFH原因遺伝子変異陽性)であり、若年LDL-C健診スクリーニングの意義を明らかにしてきた。若年成人を対象としたLDL-C健診スクリーニング(ユニバーサルスクリーニング)の有用性を明らかにした研究は、日本にも海外にもない。これまでに、FHの早期発見・早期治療に資する知見を得てきたが、その研究の過程で、非FH群もまたpolygenicな遺伝子変異の集積によって、CADリスクが高い可能性に気がついた。本研究の目的は、若年成人高LDL-C血症の遺伝的素因を解明し、CAD予防のための効果的な健診スキームを提案することである。ハイリスクな若年成人高LDL-C血症の適切な管理法が確立されれば、効果的なCAD予防を通じて、医療経済にも好影響をもたらすことが期待される。日本や世界の若者の健康に資する知見が期待される公衆衛生学的インパクトに富む学術的貢献度の高い研究課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍の影響で例年通りの健康診断が困難となり、年間のリクルート症例が減少し、より多くの症例を追加し層別解析を行うためには想定よりも時間が必要となったが、これまでに収集した検体の解析をすすめている。今後はさらに症例を追加してこれらの知見を確立していく予定である。以上から、本研究課題はやや遅れていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
予備的知見から、若年成人高LDL-C血症はFHハイリスクであることが分かった。これまでの検討は、FHの原因遺伝子に絞ってサンガーシークエンスを行い、monogenic FHかどうかを調べるものであったが、この方法では高LDL-C血症のpolygenicな要因の寄与は明らかではなかった。そこで今後は、FH変異が見つからなかった群を対象に、次世代シークエンサーを用いて、全エクソームシークエンス(WES)を行う。最新の既報に基づく高LDL-C血症をきたすpolygenicなSNPの有無を確認することにより、この群におけるpolygenicな遺伝的素因の寄与を明らかにする。WESでは検出されないSNPについては、SNP ジェノタイピングを実施する。これにより、若年高LDL-C血症の遺伝子要因(monogenic, polygenic)を解明する。本コホートは今後さらに症例数を増やすことにより、男女別、年齢別、肥満の有無別、健診の由来別(新入生健診、雇入健診)など、層別解析を行い、LDL-C健診が特にどのpopulationに有用かを明らかにする。最近のコロナ禍では体重増加に伴う高LDL-C血症が今までより増加している印象であるが、polygenic高LDL-C血症の寄与が大きくなっている可能性がある。これらについてコロナ禍前後での検討も有意義と考え、当初の予定通り継続して進める。
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Causes of Carryover |
(理由) 今年度の計画通りに研究費を使用してきたが、コロナ禍もあり、年間のリクルート症例が減少した。そのため、解析経費の使用がやや少なくなり、残額が生じた。 (使用計画) 次年度は、他欄に記載の通りに、予定通り研究を進展させ、今回の残額を、次年度分の研究費と合わせて、活用する予定である。
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Remarks |
(1)厚生労働省・厚生労働科学研究費補助金・難治性疾患政策研究事業・原発性脂質異常症に関する調査研究班・原発性脂質異常症における移行期医療研究サブグループ
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