2023 Fiscal Year Research-status Report
Stability of gut microbiota and its relationship with a risk of nonalcoholic fatty liver disease.
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22K11725
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
片岡 佳子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (40189303)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻井 明子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 助教 (70707900)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 腸内細菌叢 / 非アルコール性脂肪肝炎 / 食餌誘導性マウスモデル / 抗菌薬 / 幼若期 / α多様性 / Firmicutes |
Outline of Annual Research Achievements |
食餌誘導性非アルコール性脂肪肝炎(NASH)(8週齢から20週間ウェスタンダイエット自由摂取)モデルマウスを用いて、出生直後から離乳完了する3週齢までの幼若期に抗菌薬アンピシリン(AMP)への暴露による介入を行い、腸内環境とNASHの発症・進展に及ぼす影響を検討している。体重増加量や肝臓重量にはAMP暴露による有意な影響はなかったが、AMP暴露群中の複数個体が実験期間終了前に安楽死に至り、血清中TBAが高値で肝臓の外観上でも肝臓の線維化が進んでいるとみられた。 マウスの4,8,28週齢時の糞便細菌叢を16Sメタゲノム解析し、菌叢構成の経時的な変化を調べた。PCoA解析により、陰性対照群(AMP暴露なし、通常食)では加齢に伴う菌叢構成の変動があるが、AMP暴露により4週齢時の菌叢構成は大きく異なること、8週齢時でもAMP暴露の影響が続いていること、8~28週齢の間のウェスタンダイエット摂取は菌叢構成に影響するが、AMP暴露群では食餌切替えの影響の出方が異なっていることが示唆された。 NASHと腸内菌叢との関連性を検討するため、機械学習(ランダムフォレスト)による「NASHスコアの高低を予測できる説明変数」の探索を試みたところ、Shannon species diversity(菌叢の多様性の指標)、Firmicutes % 等が候補として挙がった。AMP暴露群では、介入直後の4週齢時に菌叢のα多様性が有意に低下し、特定の菌種(Enterococcus, Turicibacter など)が極めて優勢となっていた。AMP暴露群では8週齢時に非暴露群と同程度の比率にまで回復していない菌種もあり、そのα多様性は有意に低かった。 今後、肝臓組織の線維化の程度をNASHの評価に加え、幼若期のアンピシリン暴露や食餌切替えによる菌叢の経時的な変動とNASHとの関連をさらに検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実績の概要に示したように、幼若期に抗菌薬暴露したマウスの個体数を増やした動物実験により2019~2021年度の研究結果(NASHモデルマウスにおけるAMPバクロの個体レベルでの影響)について再現性を確認できた。脂肪肝炎の組織学的な評価のうち、肝臓のHE染色標本上での脂肪変性、小葉内炎症、Ballooning の評価が終わり、これらを合計したNASHスコアを算出済みである。 マウス糞便中の細菌叢構成の解析については、T-RFLP法による予備的な解析ののち、イルミナ社の16S Amplicon Library Protocol に従って Miseq によるV3-V4領域のシークエンスを行った。マウスの成長や食餌の切替えに伴う腸内細菌叢の変動に対して、幼若期のアンピシリン暴露が及ぼす影響について解析を進めており、これまでに実績概要に記載した結果を得ている。 NASHと腸内細菌叢との関連性については、各群の特徴を把握するための統計学的な解析を行うのと並行して、機械学習を利用した「NASHスコアが高い、あるいは低い個体を予測できる説明変数」の探索を行い、考察を進めているところである。 NASHの進展度の指標である肝臓組織の線維化の程度については、シリウスレッド-ファストグリーン染色による半定量的比較を行う予定で、そのための標本の準備はほぼできている。腸管透過性の評価についても、現在、HE染色標本上で腸粘膜の厚さを測定して比較検討中であり、採取済みのマウス血清中のジアミンオキシダーゼ(DAO)の測定も準備はできている。 以上のことから、本研究の進捗状況はおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトの脂肪肝疾患でも重症化には個人差があり、そこに腸内環境の相違がかかわっている可能性がある。ここまでのマウスモデルでの結果から、幼若期の抗菌薬暴露が成長後の腸内細菌叢の安定性に影響し、食餌誘導性NASHの重症度に関係している可能性があると考えている。 2024年度は、これまでのデータに追加すべき解析(下記)を実施しつつ、論文にまとめていく。 ①肝臓組織の線維化の程度を含めたNASHの評価をまとめる。②腸内環境の指標として血清中DAOの定量と、動物実験終了時(28週齢)に採取したマウス盲腸内容物中の腸内菌由来代謝産物の分析を行う。③上記①と②およびと2023年度までの研究結果からNASHとの関連性が深いと考えられる腸内菌についてこれまでと同様にNASHスコアとの関連性を統計学的に解析する。④定量PCRによる Bifidobacterium 属菌と全菌量の定量を行う。⑤群間の比較に加えて、個体ごとの菌叢の経時的な変化のし方の違いにも着目して、NASHとの関連を考察する。⑥NASHスコアの性差について考察する。雄マウスでは、陰性対照群に比べて、陽性対照群でNASHスコアと血清ALT値が有意に高値であり、典型的なNASHが誘導されていたが、抗菌薬暴露による有意な影響はみられなかった。一方、メスマウスでは、体重や肝臓の重量の増加は顕著でないが、アンピシリン暴露群中に肝臓の肉眼的な変化を伴って早期に安楽死に至った個体がいた。
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Causes of Carryover |
(理由)本年度の研究に必要なマウス腸内細菌叢の16Sメタゲノム解析用試薬類が予定より少額で賄えたため、次年度使用額が生じた。 (使用計画)次年度は、論文をまとめるのに重要な項目(全菌量の定量、腸内菌由来代謝産物の分析)の追加実験が必要になると予想されるため、次年度研究費(物品費)と合わせて使用する計画である。
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Research Products
(3 results)