2022 Fiscal Year Research-status Report
低酸素を標的とした糖毒性から膵β細胞を保護する栄養素・食品成分の探索と機序の解明
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22K11739
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
松永 哲郎 武庫川女子大学, 食物栄養科学部, 准教授 (10452286)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 膵臓 / インスリン / 低酸素 / DUSP / PDX-1 |
Outline of Annual Research Achievements |
2型糖尿病では、膵β細胞における低酸素ストレスによるインスリン分泌低下は重要な病態の一つであることが明らかになっている。最近、補体C3aがC3a受容体を介して、DUSP(二重特異性ホスファターゼ)の一種であるDUSP26を抑制することで、膵β細胞を保護し、糖尿病モデル動物(db/dbマウス)の高血糖の改善に作用することが報告された。一方、膵β細胞におけるDUSP26のインスリン分泌への作用および低酸素ストレスとの関係については不明な点も多い。そこで、膵β細胞における低酸素暴露によるインスリン分泌低下に対して、DUSP26の阻害が改善作用を有するかについて膵β細胞株INS-1Eを用いて検討した。改善作用が明らかになれば、ここに作用する食品成分のスクリーニングに応用可能となる。 検討の結果、低酸素環境への24時間の暴露により、グルコース応答性インスリン分泌量は有意に低下していた。また、insulin、PDX-1、GLUT2のmRNAの発現量においても、低酸素暴露による有意な低下が認められた。DUSP26阻害剤の添加により、低酸素暴露によるグルコース応答性インスリン分泌量の低下の有意な回復が認められた。また、insulinおよび、PDX-1のmRNAの発現量は、DUSP26阻害剤添加により回復傾向を示した。 以上の結果から、DUSP26阻害剤(NSC-87877)は、低酸素による膵β細胞のインスリン分泌低下に対して、改善作用を有することが示唆された。今後、DUSP26阻害によるインスリン分泌改善効果において、細胞内の作用機序について、HIFなどの低酸素関連因子やp38、ERKなどのシグナル伝達との関連で詳細に調べる必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
低酸素環境への曝露に伴うインスリン分泌低下に対して、改善作用の期待できるターゲット(DUSP26)が明らかとなった。今後、さらに詳細に解析するとともに、本分子または関連経路に作用する食品成分のスクリーニングの応用・解析が可能となる。
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Strategy for Future Research Activity |
膵β細胞におけるDUSP26阻害について、細胞生存率や細胞毒性、アポトーシスなどとの関連について詳細に検討する。また、低酸素ストレスとの関係で、糖毒性を誘導した場合のDUSP26阻害やC3a受容体刺激の効果についても検討予定である。これに関連して、低酸素との関連の深いHIFや関連因子の発現への影響についても調べる必要がある。
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