2023 Fiscal Year Research-status Report
低酸素を標的とした糖毒性から膵β細胞を保護する栄養素・食品成分の探索と機序の解明
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22K11739
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
松永 哲郎 武庫川女子大学, 食物栄養科学部, 准教授 (10452286)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 低酸素 / インスリン / 膵β細胞 / Piezoチャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】近年、Piezoチャネルが膵β細胞においても発現しており、インスリン分泌に関連することが明らかになった。本研究では、膵β細胞における低酸素曝露によるインスリン分泌低下に対して、Piezo1チャネルの活性化が改善作用を有するかについて検討した。 【方法】INS-1 832/13細胞を培養し、Piezo1チャネルアゴニスト(Yoda1)を添加し(最終濃度:0 μM, 5 μM, 20 μM)、低酸素(5%)環境下に24時間曝露することで、細胞内低酸素状態を誘導した。その後、グルコース応答性インスリン分泌量を評価した。また、細胞よりtotal RNAを抽出し、insulinおよびその転写因子(PDX-1)、Piezo1チャネル、GLUT2、GLUT1、小胞体ストレスマーカー(CHOP)、脱共役タンパク質(UCP2)のmRNA発現量を測定した。 【結果・考察】低酸素環境への24時間の曝露により、グルコース応答性インスリン分泌量は有意に低下していた。また、insulin、PDX-1、GLUT2、UCP2のmRNA発現量においても、低酸素曝露による有意な低下が認められた。一方、Piezo1チャネル、GLUT1、CHOPのmRNA発現量は、低酸素曝露により有意な上昇を示した。Yoda1の添加により、低酸素曝露によるグルコース応答性インスリン分泌量の低下の有意な回復が認められた。また、insulinのmRNA発現量は、Yoda1添加により有意な回復を示した。一方、GLUT1、PDX-1、GLUT2、CHOPでは、Yoda1添加による有意な変化は認められなかった。 以上の結果から、Piezo1チャネルの活性化は、低酸素による膵β細胞のインスリン分泌低下に対して改善作用を有することが示唆された。今後、細胞内の作用機序について、HIF1などの低酸素関連因子などとの関連で詳細に調べる必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
膵β細胞において、低酸素暴露により、Piezo1チャネルの発現が上昇することが初めて明らかとなった。また、Yoda1による同チャネルの活性化がインスリン分泌の回復をもたらすことを示した。 本研究の知見から、Piezo1チャネルを刺激・活性化する成分が糖尿病における膵β細胞の機能回復につながる可能性が期待され、今後、更なる機序の解析が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、低酸素および糖毒性に晒された膵β細胞において、低酸素に対する応答因子として重要なHIFとの関連を明らかにし、低酸素および糖毒性において、HIFへの作用が細胞の機能改善にどのように関係するのかを明らかにしていく。同時に、HIFおよびHIF関連因子に作用する食品成分を用いて、低酸素や糖毒性における膵β細胞の機能回復の評価を細胞およびモデル動物を用いて実施していく予定である。
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