2023 Fiscal Year Research-status Report
筋腎連関によるビタミンKのミトコンドリアを標的とした新規作用
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22K11746
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
何 欣蓉 北海道大学, 保健科学研究院, 特任講師 (50815561)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
陳 震 北海道大学, 保健科学研究院, 客員研究員 (60802634) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ビタミンK / 慢性腎臓病 / 骨格筋 / サルコペニア |
Outline of Annual Research Achievements |
【背景】慢性腎臓病(CKD)患者と透析患者のうち10~40 %の割合でサルコペニアを併発し、心血管疾患や死亡・入院リスクの上昇に寄与することが知られている。サルコペニアの成因については不明な点が多いが、筋肉の量的・質的調節を担う骨格筋ミトコンドリアの機能低下が観察される。ミトコンドリアの障害による活性酸素種(ROS)の除去とエネルギーの調節のバランスが崩れ、骨格筋細胞の崩壊に至るためである。ミトコンドリアの機能上昇は、腎疾患の骨格筋障害などの予防や治療につながると考える。本研究ではビタミンKによるCKDの骨格筋変調とミトコンドリア障害の改善作用を解明することを目的とする。 【方法】C57BL/6Nマウス(オス 7 週齢)を用いてCE-2餌に0.2%アデニンを混合し、4週間に自由摂食させ、CKDを誘導する。CKDモデルマウスに4週間のビタミンK (200 mg/kg)を経口投与した後、12時間絶食させ、解剖し血液および尿、腎臓、筋肉を回収した。各週のマウスの体重変化および摂食量を記録し、回収した検体を用いて、腎機能の指標である血中や尿中クレアチニン(CRE)と尿素窒素(BUN)値を測定した。また、腎臓と筋肉の組織切片を用いて、H&EおよびMT染色を行い、組織繊維化状態を評価した。さらに、腎臓のmRNAとタンパク質を抽出し、遺伝子とタンパク質の発現量を測定した。 【研究成果】4週間ビタミンKを投与したCKDマウスの血中CREが低下傾向、血中BUNが有意に減少した。また、腎臓のmRNA発現量では、腎障害マーカーKim-1の減少も確認された。さらに、腎尿細管面積においてもビタミンKの投与によって改善された。これらの結果から、ビタミンK投与によってCKDマウスの腎機能を改善したことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請のこれまでの結果では、腎臓近位尿細管細胞と骨格筋細胞培養細胞において、ビタミンKのミトコンドリアの機能維持と細胞の保護作用が確認された。CKDマウスにおいてもビタミンKの投与によって、腎機能の改善が確認された。現在では、CKDマウス腎臓と筋肉、血漿、尿検体を用いて、CKDマウスの腎臓と骨格筋における更なる影響を調べている。さらに腎臓と筋肉のミトコンドリアの特異的膜リン脂質カルジオリピン変化について調べている。ミトコンドリアを標的とした腎疾患の病態改善と機序解明を進んでいる。そのため、実験の進捗がおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、現時点で明らかになったビタミンKによるCKDマウスの腎臓保護効果について、さらに筋腎連関をはじめとする臓器連関の観点から保護作用を解明するため、腎臓と筋肉のミトコンドリアの特異的膜リン脂質カルジオリピン変化を分析している。 また、機序解明するため、抽出したmRNAとタンパク質を用いて、ミトコンドリア生合成やマイトファジーに関連する遺伝子とタンパク質の発現量を測定する。さらに腎臓と筋肉の各変化を評価することにより、「筋腎連関」に繋がるバイオマーカーを探索する。ビタミンKの投与によって腎臓と筋肉に対する影響を明らかにし、CKDの病態改善の作用解明によってビタミンK投与の対象疾患を広げることができるかどうか検討する予定。
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Research Products
(3 results)