2022 Fiscal Year Research-status Report
Study on the anti-rhinitis effect of ornithine in mice
Project/Area Number |
22K11769
|
Research Institution | Notre Dame Seishin University |
Principal Investigator |
林 泰資 ノートルダム清心女子大学, 人間生活学部, 教授 (80173037)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻本 まどか ノートルダム清心女子大学, 人間生活学部, 助手 (90845140)
吉金 優 ノートルダム清心女子大学, 人間生活学部, 准教授 (10530131)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | オルニチン / アレルギー性鼻炎 / モデルマウス / ストレス / IgE抗体 / IL-4 / コルチコステロン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,アレルギー性鼻炎モデルマウスに対するオルニチンの抗鼻炎作用,およびその機序を解明することによって,アレルギー性鼻炎の予防・治療に貢献し,患者のQOL向上に寄与するために計画した。 実験にはBALB/c雌性マウスを用いた。鼻炎の予防効果を評価する実験では,飲水中に溶解したオルニチンを5週間自然摂取させながら,卵白アルブミン(OVA)の全身および局所感作を行い,鼻炎症状を誘発した。治療効果を評価する実験では,顕著な鼻炎症状が誘発された後に,オルニチンを4週間摂取させた。オルニチンを投与する前後で,血中のOVA特異的IgE抗体,コルチコステロン,IL-4をEIA法により定量した。 オルニチン長期投与により,OVAによって誘導される鼻炎症状が予防および治療されるとともに,OVA特異的IgE抗体の増加が抑制された。また,オルニチン投与により鼻炎マウスの血中コルチコステロンは減少し,鼻炎悪化に伴う血中のIL-4濃度上昇も抑制した。 ストレス指標である血中コルチコステロン濃度が低下したことは,オルニチンによってマウスの鼻炎症状とともに,ストレスレベルも軽減されたことを示している。またIL-4は,樹状細胞から抗原提示を受けたナイーブT細胞(Th0細胞)が2型ヘルパーT細胞(Th2細胞)へ分化する際に必要なサイトカインであり,またB細胞がTh2細胞から刺激を受けて形質細胞に分化するときにも必須である。したがって,オルニチンによる抗鼻炎作用の一部は,Th0細胞からTh2細胞への分化を抑制する機序によって発揮されていると思われる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和4年度の研究計画は,オルニチンによる鼻炎症状緩和とストレス軽減の関連性を明らかにすることであった。オルニチンの薬理作用については,再現性のある抗鼻炎作用と抗原特異的IgE抗体の抑制作用がみられた。また,先行研究によってオルニチンの抗ストレス作用が報告されており,本実験においても鼻炎マウスの血中コルチコステロン濃度の低下が観察された。これらの結果は,オルニチンによるストレス軽減と抗鼻炎作用が深く関連していることを示唆している。しかし,その因果関係については明らかではない。 本研究では,血中のIL-4濃度が鼻炎症状悪化にともなって増加すること,この増加がオルニチン投与により抑制されることを明らかにした。したがって,オルニチンがTh0細胞からTh2細胞への過剰な分化を抑制し,ヘルパーT細胞(Th細胞)の活性バランスを正常に戻すことによって抗鼻炎作用を発揮していることを示唆している。 以上より,オルニチンの抗鼻炎作用は複数の機序を介していることが推察される。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後はオルニチンの抗鼻炎作用の機序を詳しく検討する予定である。昨年度の研究で,オルニチン投与による鼻炎モデルマウスのストレス軽減が明らかになったが,以下に示す課題が残っている。 オルニチンの抗ストレス作用については先行研究で示されている。しかし,これらは単回投与直後のストレスレベルを評価したものである。我々の研究では鼻炎モデルマウスを作製するために,数週間をかけて抗原物質による感作を繰り返す必要がある。したがって,オルニチンの経口投与も数週間に及ぶことになる。さらに,今回明らかになったストレス軽減作用がオルニチンの直接作用なのか,また鼻炎改善による間接的なものなのか,現時点では明らかではない。したがって,今後は我々の実験系に即した形で,オルニチン長期投与後のストレス軽減作用を評価する必要がある。 次に,免疫反応に対するオルニチンの作用を詳細に検討する予定である。昨年度,鼻炎悪化に伴う血中IL-4の増加をオルニチンが抑制することがわかった。今後は,IL-5やIL-13などの他の血中サイトカインも定量する。また,脾臓やパイエル板などの免疫器官・組織に着目し,炎症性サイトカインおよび各種Th細胞のマスター転写因子の遺伝子をリアルタイムPCR法によって解析する予定である。 さらに,アレルギー反応の最終段階であるマスト細胞からの脱顆粒に対するオルニチンの作用を評価することも計画している。この実験では,マスト細胞モデル細胞株であるラット好塩基球性白血病細胞RBL-2H3を用いて,ケミカルメディエーターの遊離に伴うβ-ヘキソサミニダーゼの放出量を定量する。この放出量を指標として,オルニチンの脱顆粒抑制作用を評価する予定である。 以上より,多岐にわたるオルニチンの抗鼻炎作用の機序を明らかにする所存である。
|
Causes of Carryover |
OVAによる鼻炎モデルの作製に数ヶ月を要したことが最も大きな理由である。その結果,オルニチンによる抗鼻炎作用とストレス軽減作用との関連性を詳細に検討することができなかった。すなわち,オルニチンの作用が直接的なものか,鼻炎改善による間接的なものかなのかを明らかにすることができなかった。当初,オルニチンを投与した鼻炎モデルマウスのストレス評価とともに,無処置のマウスにオルニチンを投与して,オープンフィール試験,高架式十字迷路試験,明暗箱試験などの行動薬理学的な手法や,血中のコルチコステロン,カテコールアミンなどのストレスホルモンを分析することにより,ストレス軽減作用を評価する予定であったが,この研究が十分に進まなかった。また,鼻炎モデルマウスの血中サイトカイン分析はIL-4のみであった。アレルギー反応を反映するIL-5やIL-13などのサイトカインを分析することができなかった。これらの課題は,次年度に繰り越した研究費により行う予定である。
|