2022 Fiscal Year Research-status Report
アルツハイマー病発症緩和に有用な食品微生物をモデル生物「線虫・メダカ」で探る
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22K11781
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
小村 智美 兵庫県立大学, 環境人間学部, 助教 (10736515)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 線虫 / C. elegans / 乳酸菌 / アルツハイマー病 / アミロイドβ |
Outline of Annual Research Achievements |
認知症患者の60%を占めるアルツハイマー病は、脳内にアミロイドβ(Aβ)が生成・凝集し、神経細胞に変性を来すことで記憶障害が生じる。これまで小村らは、モデル生物の一種「Caenorhabditis elegans(線虫)」を用いて乳酸菌摂取による寿命延長や抗老化作用の解明に取り組み、その研究過程で、乳酸菌が神経機能の老化を軽減することを見出した(Komura et al., Microbiol. Spectr. 2022;10(3):e0045421)。乳酸菌は生理的な神経機能の低下だけでなく、神経障害に対しても効果を発揮する可能性がある。そこで本研究ではヒト Aβ合成遺伝子を導入したトランスジェニック線虫に種々の乳酸菌を与え、Aβによる神経障害を抑制できるか否か検証した。その結果、神経にヒトAβ合成遺伝子を導入した線虫では、対照線虫と比較して誘因行動が顕著に低下した。今回実験に供した乳酸菌14株のうち2株は、Aβ発現に伴う誘因行動の低下を顕著に抑制した。また、筋肉にヒトAβ合成遺伝子と回転遺伝子を導入した線虫では、Aβ遺伝子が発現すると回転運動が低下し麻痺が生じた。その一方で、これらの2株を与えたトランスジェニック線虫では、麻痺が抑制され回転運動を示した。さらに、これら2株を与えた線虫体内では、Aβ量が顕著に減少していた。以上より、ある種の乳酸菌を与えた線虫は体内のAβ量を抑制し、行動異常を改善させることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
線虫モデルを用いて乳酸菌摂取におけるAβ発現抑制効果を見出すことができ、論文発表した。当初の予定よりも早期に線虫モデルで研究成果を見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まずは線虫よりも高等で、認知機能を有するモデル生物の一種「小型魚」を用いて、アルツハイマー病モデルの作製に取り組む。そのために飼育環境の設備を整え、研究室にセットアップし、モデル開発に必要な実験系の構築を進める。
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Causes of Carryover |
線虫モデルを用いた実験は既存の実験器具などを使用しながら進めることが可能であったため、主に論文投稿のための参考図書、小型魚飼育のための消耗品購入に充当し、小型魚の飼育方法の練習を行ってきた。 次年度に小型魚を用いた実験を本格的に開始する予定である。飼育水の自動循環装置などを導入し、飼育環境の設備を整える予定であり、そのための飼育環境の準備と実験のために助成金を使用したいと考えている。
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