2022 Fiscal Year Research-status Report
コラーゲン・トリペプチドの血管保護作用の機序解明と疾病に対する予防治療効果の検証
Project/Area Number |
22K11789
|
Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
高辻 英仁 (齋藤) 金沢医科大学, 医学部, 助教 (40768959)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 崇之 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (00374942)
米倉 秀人 金沢医科大学, 医学部, 教授 (80240373)
吉冨 泰央 金沢医科大学, 医学部, 講師 (80399039)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | コラーゲン・トリペプチド / 酸化ストレス / mTORC1 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでコラーゲン・トリペプチド(CTP)は、コラーゲンやヒアルロン酸の産生促進作用により骨折治癒の促進、変形性関節症の改善、皮膚状態の改善などの効果を示し、機能性食品としても利用されている。我々はこれまでCTPによる効果の1つとして報告のあったアテローム性動脈硬化に対する改善作用に着目し、その分子メカニズムの解明を行ってきた。その結果、CTPが酸化ストレスによって抑制された初代培養ヒト大動脈内皮細胞(HAEC)の遺伝子発現を包括的に回復させ、血管保護作用を発揮することを見出した。そこで今回は、CTPがどのように細胞に認識され、その後どのような細胞内シグナリングを介して酸化ストレスで抑制された遺伝子発現を回復するのか、そのメカニズムを解明することを目的としている。 令和4年度は、我々がこれまで報告したマイクロアレイによる結果を再解析したところ、細胞外の栄養状態を感知し細胞増殖の制御を担うリン酸化酵素の複合体mTORC1の活性化因子であるRas Homolog enriched in Brain (Rheb)の遺伝子発現が、酸化ストレスによって減少し、CTP処理により発現回復する傾向が見られた。そこで、HAECを用いて、1) 過酸化水素による酸化ストレス処理したサンプル、2) 酸化ストレス下CTP処理したサンプル、3) CTPのみ処理したサンプル、4) 未処理のサンプルの4種類をqPCRにより比較検討した。その結果、マイクロアレイの結果と同様にRhebの遺伝子発現が酸化ストレスにより減少し、CTP処理により発現回復する傾向が見られた。また、酸化ストレスを加えずCTPのみ処理したサンプルでは、Rhebの遺伝子発現に有意な変化は見られなかったことから、この遺伝子発現変化は酸化ストレス下でのCTPによる作用によるものと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
タンパク質レベルで遺伝子発現を解析するためのリン酸化アレイ解析を行うことができなかったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
リン酸化アレイ解析を行うことで、CTPがmammalian target of rapamycin complex1(mTORC1)を含むmTORシグナル経路を介して遺伝子発現を制御しているかタンパク質レベルで明らかにする予定である。また、リン酸化アレイ解析の結果からmTORシグナル経路以外にも関連する経路があるか明らかにする予定である。さらにCTPがどのような認識機構で細胞に認識されているのか、候補となる4種類のペプチドトランスポーター(SLC15A1, SLC15A2, SLC15A3, SLC15A4)に着目し、明らかにする予定である。
|
Causes of Carryover |
リン酸化アレイ解析の製品が海外製で納入が大幅に遅れることが分かり、令和4年度内に購入できなかったため、次年度使用額が生じた。次年度使用が生じた令和4年度の科学研究費は、令和5年度の研究費とともにリン酸化アレイ解析の費用や物品費に充てる予定である。
|