2023 Fiscal Year Research-status Report
Epigenetics regulation of neutrophil extracellular traps by fatty acids
Project/Area Number |
22K11790
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Research Institution | Suzuka University of Medical Science |
Principal Investigator |
佐藤 英介 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 教授 (60211942)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 好中球 / 好中球細胞外トラップ / 短鎖脂肪酸 / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、好中球の新たな細胞死の経路としてNETosisが明らかになった。これは好中球の核内から細胞外へDNAを網状に放出することで細菌などの異物を捕捉し、殺菌する現象であり、好中球細胞外トラップ(NETs)と呼ばれている。好中球からのDNAの放出はクロマチンが脱凝縮することで促進される。この脱凝縮は、ヒストンのアルギニン残基のシトルリン化やリジン残基のアセチル化による電荷消失で起こる。これまで、本研究室では酢酸がGPR43を介した系でNETosisを亢進させることを報告した。酢酸は、GPR43を介した系だけでなく、細胞内に取り込まれてヒストンアセチル化を亢進させることも知られている。そこで、本研究では、酢酸のヒストンのアセチル化に着目して、酢酸によるNETosis亢進への影響を調べた。実験結果から、好中球様細胞に酢酸を添加するとヒストンアセチル化が亢進し、細胞膜ではモノカル酸トランスポーターである(MCT1、MCT4)が発現し、細胞内ではアセチルCoAシンテターゼ(ACSSⅡ)が発現していることが分かった。また、MCTの阻害剤とACSSⅡの阻害剤を添加することでヒストンのアセチル化が抑制されたことから、ヒストンアセチル化が酢酸の細胞内流入が原因であることが判明した。ヒストンのアセチル化が促進されるとヒストンのシトルリン化も促進されるため、アセチル化の促進によってヒストンの電荷がマイナスチャージに傾き、DNAとの親和性が低下したことでクロマチンが脱凝縮し、好中球からのDNA放出が亢進したと考えられる。この結果、酢酸添加によるヒストンのアセチル化促進によってNETosisの亢進が起きる可能性が考えられた。以上のことから、酢酸のような食品成分によりNETosisを亢進させ自然免疫能を向上させることができるので、今後、生体防御能を食品成分で高める方法を開発できる可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画は順調に進行している。本年度は、in vivoの実験にも成果を出すことができた。さらに次年度は、ヒストンタンパク質のアセチル化の部位特定とin vivoの実験の成果を挙げていく。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒストンアセチル化の状態の解析 ヒストンタンパク質は,N 末端尾部を中心にアセチル化されるリシン残基に富み, 例えば,ヒト H3 では,4 番目のリシン(K4),K9, K14,K18,K23,K27,K36,K56,K64,K79,K115, K122 のアセチル化修飾が同定されている。同様に,H2A,H2B,H4 にも複数のアセチル化サイトが存在する。アセチル化修飾のパターンとNETosisとの関連や,個々のアセチル化サイトの特異的な影響については明らかになっていないので、個々のアセチル化したリシン残基を認識する抗体を用いて、どの残基のアセチル化がNETosisに影響を与えるかを解析する。 ヒストンアセチル化がヒストンシトルリン化に及ぼす影響の解析 ともに正電荷を持つリシンとアルギニンは、配列上の位置に依らずリシンは表面に露出して他のヌクレオソームとの相互作用を仲介し、アルギニンはヌクレオソームの DNA と相互作用し、その負電荷を中和する傾向があるという異なる性質をもつため、この両者の性質の違いが、アセチル化リジンとアルギニンのシトルリン化によってNETosisの際のクロマチン放出に影響を与える可能性が考えられる。従って、前述の条件の際に、同時にアルギニンのシトルリン化の状況をウエスタンブロッティングでモニタリングして、ヒストンのアセチル化が、アルギニンのシトルリン化に影響を与え、NETosisを制御しうるかを検証する。
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Causes of Carryover |
英文原著投稿、英文校正、消耗品としておおよその研究費を使用したが、9万円程度の次年度使用額が発生した。本研究費は、次年度に使用する予定である。
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