2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K11806
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
秋枝 さやか 宮崎大学, フロンティア科学総合研究センター, 准教授 (20549076)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 2型糖尿病 / 食習慣 / 肥満 / 生活習慣病 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者はこれまでの研究から、普通食に水を加えた軟食をラットに与えるだけで、肥満を伴わない2型糖尿病モデルを作出できることを報告している(J Endocrinol 2014, Prev Nutr Food Sci 2014, Exp Physiol 2018)。また、予備的な実験から軟食摂取ラットでは、体重の増加は認められないが、内臓脂肪の蓄積、インスリン抵抗性、脂肪肝に加え、炎症性サイトカインの発現が上昇していることを見出した。本研究の目的は、「普通食を水で軟らかくした餌をラットに給餌するだけで、なぜ肥満を伴わない糖尿病が惹起されるのか」、このメカニズムを分子レベルで明らかにし、日本人を含むアジア人の2型糖尿病の発症機構を明らかにすることである。 本研究では、7週齢の雄性Wistarラットを用いて、軟食開始後、経時的にカロリー摂取量、体重、行動量、酸素消費量などのエネルギーバランスや肝脂肪・内臓脂肪蓄積などを固形食摂取ラットと比較検討を行った。軟食摂取後24週間までのカロリー摂取量、体重、行動量、酸素消費量は固形食ラットと差はなくエネルギーバランスは取れていたが、呼吸商が低く糖よりも脂肪の利用が増加していることが示唆された。経時的に軟食摂取による生体の変化を検討してみると、耐糖能異常や肝脂肪の有意な増加は、軟食摂取4週間後から認められ、インスリン抵抗性を示す指標の一つであるHOMA-IRは軟食摂取9週間後から上昇した。さらに内臓脂肪の蓄積は、軟食摂取24週間後から有意に増加した。これらの結果から、軟食の摂取によって糖代謝への影響が早期に認められ、その後インスリン抵抗性や内臓脂肪の蓄積が起こると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
軟食摂取開始から糖尿病の発症に至るまでのエネルギーバランスや糖代謝、脂肪蓄積などの経時的変化を明らかにし、研究計画に沿って実施できたことから判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者は、予備的な実験において軟食で飼育したラットでは、脳や骨格筋においてMCP-1やIL-6などの炎症性サイトカインの発現が亢進していることや骨格筋においてタンパク質分解酵素の発現が上昇していることを見出している。そこで、軟食摂取によるエネルギー代謝機構の破綻を促進あるいは阻止する分子機構を代謝臓器で解明する。また、軟らかい食事を好む、あるいは早食いをするといった生活習慣を改善することが、糖代謝異常などの生活習慣病の改善にどの程度効果があるのかを検討するため、軟食を摂取をさせたラットを固形食に戻し、血糖値やインスリン値が改善するかどうかや、肝脂肪・内臓脂肪の蓄積が変化するどうかを判定する予定である。
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