2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K11806
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
秋枝 さやか 宮崎大学, フロンティア科学総合研究センター, 准教授 (20549076)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 2型糖尿病 / 糖代謝 / 骨格筋 / 筋萎縮 |
Outline of Annual Research Achievements |
飽食の時代と言われる現代の日本では、過食や運動不足による肥満症の増加が年齢を問わず大きな問題となっている。申請者はこれまでに、肥満を基盤に発症すると考えられてきた生活習慣病に関し、過食や運動不足ではなく摂取する食物の性状に着目した研究を遂行してきた。申請者は普通食に水を加えた軟食をラットに与えるだけで、肥満を伴わない2型糖尿病モデルを作出できることを報告している。本研究では、軟食の摂取がどのように糖尿病を引き起こすのか、そのメカニズムを明らかにすることを目的とした。7週齢の雄性Wistarラットを用いて、1日3時間制限給餌(10:00-13:00)で餌を与え、軟食摂取開始4週、9週、14週、24週で空腹時血糖値、空腹時インスリン値、HOMA-IRを検討したところ、固形食群に比べ軟食群では、軟食摂取開始4週から空腹時インスリン値が有意に増加し、軟食摂取9週からHOMA―I Rが有意に増加した。また軟食摂取24週で骨格筋(ヒラメ筋・腓腹筋)を形態的に観察したところ、筋繊維の萎縮が認められた。タンパク質分解経路としてユビキチン・プロテアソーム系およびオートファジーリソソーム経路の2つの経路が考えられるが、軟食群ではヒラメ筋・腓腹筋いずれもユビキチン・プロテアソーム系の酵素の発現が上昇していた。さらに、これらの経路のトリガーとなる炎症性サイトカインの発現を調べたところ、軟食群ではIL-6が有意に高かった。また、IL-6の下流の経路を検討したところ、軟食群ではpSTAT3のリン酸化やSOCS3の発現が上昇していた。これらの結果から、軟食摂取ラットでは、IL-6-STAT3-SOCS3およびユビキチン・プロテアソーム経路を介して骨格筋のタンパク質分解が起こっていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肥満を伴わない2型糖尿病の特徴について、軟食ラットをモデルとして解析を行った。軟らかい食物を早食いするという食習慣では、早い時期からインスリン抵抗性が現れることが明らかになった。この結果は、食習慣により肥満が引き起こされ、代謝臓器における慢性炎症が増長することでインスリン抵抗性が惹起されるという従来のシナリオとは異なる糖尿病発症機序があることを示唆するものであり、肥満を伴わないアジア人型2型糖尿病の発症要因を考える上で、重要な知見である。また、軟食を24週間与えたラットでは、骨格筋の筋萎縮が認められることが明らかとなった。糖尿病患者は高齢になると筋肉が減少しやすいことが知られており、高齢者が増加する我が国では、大きな健康問題の一つとなっているサルコペニアを予防する上でも本研究を遂行することは重要である。以上の成果から、本研究は、おおむね順調に進展していると考えられ、今後は軟食摂取により糖尿病を示したラットが固形食に切り替えることにより、改善効果が認められるかどうかを検討したい。
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Strategy for Future Research Activity |
軟らかい食事を好む、あるいは早食いをするといった生活習慣を改善することが、糖代謝異常などの生活習慣病の改善にどの程度効果があるのかを検討するため、軟食摂取により糖尿病を発症したラットの食餌を固形食に切り替え、経時的に採血し、血糖値やインスリン値が改善するかどうかを判定する。また、固形食に切り替えることで骨格筋の筋萎縮が改善するかどうかを検討する予定である。
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Causes of Carryover |
動物の飼育開始が遅れたため、今年度に使用する予定であった予算を来年度に繰り越した。
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Research Products
(9 results)