2022 Fiscal Year Research-status Report
肝臓におけるDHAを介したエネルギー基質応答性の代謝調節機構
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22K11813
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
菱川 大介 日本医科大学, 医学部, 講師 (10569966)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 真志人 日本医科大学, 大学院医学研究科, 大学院教授 (40643490)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ドコサヘキサエン酸 / 肝細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝細胞の代謝調節におけるドコサヘキサエン酸(DHA)含有リン脂質の寄与を解析するため、DHA含有リン脂質合成に必須の酵素であるAGPAT3の肝細胞特異的欠損マウス(Agpat3 LKOマウス)を作製した。 出生後の体重変化を経時的に解析した結果、Agpat3 LKOマウスは、3週齢から4週齢にかけての体重増加がコントロールマウスと比べて有意に低下していた。これは、肝細胞におけるDHA含有リン脂質合成が、栄養源が母乳から固形食へと変化する離乳期の成長に寄与する可能性を示唆していると考えられる。 肝細胞は成長ホルモンに応答した成長因子の分泌や、栄養代謝を行うことで離乳期における成長を制御している。そこで、肝細胞のDHA含有リン脂質の欠乏が肝組織の遺伝子発現プロファイルに与える影響を明らかにするため、4週齢のAgpat3 LKOマウスおよびコントロールマウスの肝組織におけるトランスクリプトーム解析(RNA-seq)を実施した。 RNA-seq解析の結果、コントロールマウスとAgpat3 LKOマウス肝臓において2倍以上発現が変動する遺伝子(False Discovery Rate<0.1)として、Agpat3 LKOで増加する遺伝子が532個、減少する遺伝子が146個同定された。それらの中には、成長に関与する遺伝子群やエネルギー代謝に関わる遺伝子群が含まれていた。また、発現変動の見られた遺伝子群のGene Ontology解析を実施した結果、Agpat3 LKOマウスの肝臓においては、自然免疫反応やウイルス感染応答に関わる遺伝子群の発現が増加していることが明らかとなった。 これらの結果から、肝細胞におけるDHA含有リン脂質の欠乏が、肝臓における遺伝子発現プロファイルの変化を介して、離乳期の成長に影響を与える可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度に実施したRNA-seq解析の結果、肝細胞のDHA含有リン脂質欠乏により離乳期の成長が抑制されるメカニズムに関与する可能性のある候補因子を複数同定した。
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Strategy for Future Research Activity |
肝細胞におけるDHA含有リン脂質の欠乏により発現が変動する遺伝子群が明らかとなったため、今後はその分子機構に関する解析を行う。まず、ゲノムワイドなオープンクロマチン解析を行い、DHA含有リン脂質欠乏時の転写応答機構を明らかにする。加えて、離乳期のAgpat3 LKOマウス肝臓において見られる遺伝子発現の変化が、高脂肪食給餌や絶食などによる栄養状態の変化によっても見られるかどうかについても、解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
昨年度の前半は動物の飼育スペースの問題から、遺伝子欠損マウスを想定していた通りに増やすことができなかった。そのため、それらのマウスを用いて行う予定だった生化学的な解析の一部が実施できず、次年度に持ち越す必要が生じた。飼育スペースの問題については、現在は解決されている。
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Research Products
(1 results)