2023 Fiscal Year Research-status Report
肝臓におけるDHAを介したエネルギー基質応答性の代謝調節機構
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22K11813
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
菱川 大介 日本医科大学, 医学部, 講師 (10569966)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 真志人 日本医科大学, 大学院医学研究科, 大学院教授 (40643490)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ドコサヘキサエン酸 / 肝細胞 / エネルギー代謝調節 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝細胞特異的にDHA含有リン脂質合成に必須の酵素であるAgpat3を欠損する(Agpat3-HKO)マウスを用いた解析を実施した。前年度はタモキシフェン誘導性の肝細胞特異的欠損モデル(AlbCreERT2)を使用した解析を行ったが、タモキシフェン自身の影響を排除するため、タモキシフェンを使用しないモデル(AlbCre)を用いたAgpat3-HKOマウスを作製した。 肝細胞および肝臓におけるトランスクリプトーム解析(RNA-seq)の結果、タモキシフェンを使用しないモデルにおいてもAgpat3の欠損がエネルギー代謝関連遺伝子群の発現を誘導することが明らかとなった。 Agpat3-HKOマウスにおいてはDHA含有リン脂質が欠乏する一方、その基質であるDHA-CoAが蓄積することが予想される。そこで、そのどちらがAgpat3-HKOにおいて見られるエネルギー代謝関連遺伝子群の発現変化に寄与しているのかを解析した。肝細胞にDHA-CoAを蓄積させるモデルとして、アデノ随伴ウイルス(AAV)を用いて脳におけるDHA-CoA合成酵素である長鎖アシルCoA合成酵素6(Acls6)を肝細胞特異的に過剰発現させる実験系を構築した。定量RT-PCR解析の結果、肝細胞におけるAcsl6過剰発現は、一部のエネルギー代謝関連遺伝子においてはAgpat3-HKOと同様に発現を増加させる一方で、いくつかの遺伝子についてはAgpat3-HKOとは逆に発現が抑制されることが明らかとなった。 これらの結果から、Agpat3欠損において見られる肝細胞の遺伝子発現プロファイルの変化には、DHA含有リン脂質の欠乏とDHA-CoAの蓄積が独立して寄与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスを用い、in vivoにおいてDHA代謝を変化させるモデルを構築し、それらの肝細胞における遺伝子発現プロファイルの変化を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度までに実施した研究から、Agpat3-HKOマウスにおいて見られるエネルギー代謝関連遺伝子群の発現変化が、肝細胞におけるDHA含有リン脂質欠乏やDHA-CoAの蓄積を含む独立した複数の経路を介していることが明らかとなった。そこで令和6年度は、オメガ3脂肪酸含量の異なる複数の高脂肪食による負荷をAgpat3-HKOマウスや肝細胞Acsl6発現マウスにおいて行い、DHA代謝動態の変化がエネルギー代謝表現型に与える影響を明らかにする。また、それらのマウスの肝細胞におけるトランスクリプトーム解析(RNA-seq)に加え、ゲノムワイドなオープンクロマチン解析(ATAC-seq)や活性化エンハンサーの同定(ChIP-seq)を実施することにより、その分子基盤を明らかにする。
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Causes of Carryover |
試薬の納期が遅れ、支払いが次年度になったため
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Research Products
(2 results)