2022 Fiscal Year Research-status Report
長鎖脂肪酸とその細胞への取り込みを担う受容体の特異的結合相互作用の立証
Project/Area Number |
22K11825
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
都築 巧 京都大学, 農学研究科, 助教 (50283651)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
真鍋 祐樹 京都大学, 農学研究科, 助教 (20730104)
山崎 正幸 龍谷大学, 農学部, 教授 (80397562)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 長鎖脂肪酸 / CD36 / 特異的結合相互作用 / 蛍光増強試験 / 構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳動物では、オレイン酸などの長鎖脂肪酸は細胞表面受容体の一種 CD36 (cluster of differen-tiation 36) を介して細胞内に取り込まれると考えられている。しかしながら、両者の特異的相互作用は実証されていない。本研究では、我々が考案した蛍光増強試験等を適用して長鎖脂肪酸(およびその関連物質)と CD36 の特異的結合相互作用の立証を試みる。また、脂質-CD36複合体の X 線結晶構造解析にも取り組む。 蛍光増強試験ではCD36のアミノ酸149から168の領域に相当する部分のペプチド (CD36(149-168) ペプチド) のアミノ末端に蛍光色素を付加したプローブを準備する。蛍光色素は周辺の疎水度に応じて放出蛍光が増えるという性質があるので、脂質(リガンド候補)がプローブのペプチド部分に結合すると、蛍光色素付近の疎水度が増加し放出蛍光も増えると考えた。実際、マウスCD36(149-168)ペプチドを蛍光標識したプローブに対して長鎖の脂肪族アルデヒドなどがプローブペプチドに特異的に結合することをすでに報告している。一方、リノール酸などの長鎖脂肪酸の場合そのような結果は得られていなかった。 令和4年度はヒト型のCD36(149-168)ペプチドを合成し、これを用いた蛍光増強試験を行なったところ、上記のマウス型のペプチドを用いた場合と同等の結果が得られた。一方、ヒト型、マウス型にかかわらず、飽和型の脂肪酸のひとつであるラウリン酸 (C12:0) がプローブペプチドに特異的に結合するという結果を得た。ラウリン酸が中鎖、長鎖脂肪酸のどちらに分類されるか明確な基準はないが、脂肪酸が特異的にCD36に結合することを支持する結果が得られたことは意義がある。また、CD36(146-168)とグルタチオン-S-トランスフェラーゼの融合タンパク質の作成に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
オレイン酸やリノール酸といった典型的な長鎖脂肪酸とCD36ペプチドとの特異的結合作用に関して実証できていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
1. ラウリン酸のアナログ(ラウリン酸メチルなど)のCD36(149-168)ペプチドに対する特異的結合を蛍光増強試験により調べる。これによりラウリン酸のカルボキシル基の重要性について明らかにする。 2. ラウリン酸が蛍光標識していないCD36(149-168)ペプチドに直接的に結合するかを、液体クロマトグラフィー/マススペクトロメトリーを用いた試験法により確認する。 3. オレイン酸、リノール酸などの長鎖脂肪酸がCD36(149-168)ペプチドとの特異的結合を明らかにすることはできていない。これは長鎖脂肪酸がミセルを形成してプローブペプチドを抱合してしまう可能性などが考えられる。そこで、脂肪酸のミセル形成を阻害した条件で両者の結合を検討する。具体的には、ウシ血清アルブミン、シクロデキストリンなどを用いて長鎖脂肪酸を分散化した状態で蛍光増強試験等を実施する。
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