2022 Fiscal Year Research-status Report
脂肪炎症性疾患の原因遺伝子Xが高脂肪食による脂肪炎症と2型糖尿病に及ぼす影響
Project/Area Number |
22K11828
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
有持 秀喜 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 助教 (30311822)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 脂肪炎症 / マクロファージ / 高脂肪食 |
Outline of Annual Research Achievements |
不健康な食習慣は肥満と脂肪組織の慢性炎症を引き起し、生活習慣病の原因となる。研究代表者は周期性発熱と脂肪炎症が見られる患者から新規に同定された疾患原因遺伝子Xの変異と同じ遺伝子変異を持つマウスに高脂肪食を与えると、脂肪組織中のマクロファージの割合が増加するという結果を得ているが、炎症性細胞の割合が増加し、脂肪炎症を増強する機序、およびこの増加が肥満による生活習慣病に及ぼす影響は不明である。そこで遺伝子Xの変異によってマクロファージの割合が増加する機序を明らかにする目的で対照マウスおよび変異マウスに10週間、高脂肪食を投与し脂肪組織を回収してRNAを抽出し、cDNA作製後、半定量的リアルタイムPCRを行って各種遺伝子の発現レベルを検討した。その結果、高脂肪食を与えた遺伝子変異マウスの脂肪組織ではコントロールマウスと比べて、マクロファージの遊走に寄与するCcl2遺伝子の発現が高いことが明らかとなった。しかし、Ccl3やCcl4などのケモカインの遺伝子発現には差が見られなかった。また炎症性サイトカインであるIl1b、Tnfa、Cxcl9、およびCxcl10の遺伝子発現は変異マウスの脂肪組織で高いことが明らかとなった。脂肪組織をコラゲナーゼ処理してstromal vascular fractionを調製し、その中に含まれる炎症性マクロファージの割合を調べたところ、遺伝子変異マウスの脂肪組織で多いことが明らかとなった。これらの結果は遺伝子Xの変異が脂肪組織においてCcl2発現を誘導することで炎症性マクロファージの浸潤を促進し、脂肪炎症を引き起こしている可能性を示唆している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
周期性発熱と脂肪炎症が見られる患者から新規に同定された疾患原因遺伝子Xの変異と同じ変異を持つマウスに高脂肪食を与えた際に見られる脂肪組織へのマクロファージの浸潤に関する機序を明らかにすることを目的としており、令和4度の研究により機序の一端が明らかとなったため、おおむね順調であると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
脂肪組織へのマクロファージの浸潤および脂肪炎症の促進に関する機序をさらに解明するため、フローサイトメトリーを用いた脂肪組織への浸潤免疫細胞の検討や、抗MCP-1抗体を用いたCcl2発現の重要性の検討、脂肪組織が産生する炎症性サイトカインおよびケモカインの定量、このマウスモデルで見られる脂肪炎症に関係しているサイトカイン、ケモカインの産生に関わる細胞内シグナリングの活性化経路の研究などを行い、生活習慣病の新たな発症機序の解明や新規治療標的の発見を目指す。
|