2023 Fiscal Year Research-status Report
認知症高齢者のQOL向上を実現するセミオーダーメイド栄養ケアモデルの発展的研究
Project/Area Number |
22K11835
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Research Institution | Tokai Gakuen University |
Principal Investigator |
佐藤 香苗 東海学園大学, 健康栄養学部, 教授 (40405642)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 認知症高齢者 / 推定エネルギー必要量 / 日常生活動作 / 身体活動レベル / 行動観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
先行研究で開発した認知症高齢者の栄養ケアモデルを個々人の状態に、よりマッチする「セミオーダーメイド型の栄養ケアモデル」へと発展させることを目的に研究を進めている。 認知症高齢者は日常生活動作(Activities of Daily Living,ADL)の低下や要介護度の悪化が速く、それらの前段階であるフレイルやサルコペニアには低栄養が強く関連しているため、一日のエネルギー必要量(Energy Requirement, ER)の設定は、認知症高齢者の栄養ケアにとって枢要な課題である。 認知症高齢者の摂取エネルギー量の実態調査の結果、障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)B1に相当する対象者に残食が顕著に多く、ERを過大評価している可能性が考えられた。寝たきり度は、特に「移動」の状態に着目して判定しているが、例えば、中期段階以降のアルツハイマー病患者は、認知機能低下による代謝亢進、食事行為障害によるエネルギー摂取量低下、徘徊等の行動症状による活動量増加に伴い、体重が減少する。このことは、ERの設定に必要な身体活動レベル(Physical Activity Level,PAL)は、認知症の種類とその重症度によって調整する必要があることを示唆している。 そこで、今年度はこれまで蓄積した介護者による「認知症高齢者の行動観察記録」を整理・集約し、PALの再分類を試みた。我々の先行研究で作成した認知症高齢者の安静時エネルギー消費量の推定式に当該PALを乗じて求めたERは、個々人の摂取エネルギー量の実態とほぼ一致しており、妥当な結果であった。 また、行動観察記録データがない対象者においても、PALの再分類値の外挿によって、データ補完が可能であった。以上から、簡便かつセミオーダーメイド型のER設定法を確立できたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行研究で開発した認知症高齢者の栄養ケアモデルを個々人の状態に、よりマッチする「セミオーダーメイド型の栄養ケアモデル」へと発展させることが本研究の目的である。 研究代表者の異動に伴い、予定していた新たな介入施設および対象者のリクルートは実現しなかったものの、これまで蓄積した膨大なデータをもとに、2023年度の主目的であったPALの再分類を、対象者の日常をよく知る介護者が記録した、行動観察データの詳細な分析によって実現した。また、行動観察記録がない対象者へのデータ補完可能性についても確認することができた。 加えて、我々がこれまでに作成した安静時エネルギー消費量との組み合わせにより、セミオーダーメイド型のER設定法を確立できた。 以上から、総合的に勘案して「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、以下の2点を行う予定である。 1.認知症高齢者の生活の質(Quality of life,QOL)と栄養・食事摂取状況の関連およびセミオーダーメイド型のER設定法に係る論文化と外部発信を行う。 2.在宅認知症高齢者への栄養強化常備菜(おかず団子)の投与可能性を考慮し、パッククッキング法を用いて、おかず団子の調理工程および食形態分類への適用に係る簡易化を試みる。
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Causes of Carryover |
2023年度は、新型コロナウイルス感染症は5類感染症へ移行となったものの、認知症高齢者にとって健康上の脅威であることに変わりはなく、研究代表者の異動もあいまって、新たな介入施設・対象者をリクルートしなかったため、測定機器等の追加購入費および人件費の支出がなかった。 2024年度は、栄養介入の効果測定等、解析の一部にRandomization検定による単一事例分析を試みる予定である。当該手法は、群間比較では相殺されてしまう個人内の変化のプロセスを検討できることに加え、栄養療法の恩恵を受けることができない対照群を設けることなく、個人を縦断的に追跡可能なため、認知症の進行や病状の悪化速度が速い対象者の脱落回避につながると期待する。当該分析手法の習得のために、研究協力者を含めた研修会の開催を複数回予定している。さらに、これまで得られた成果の論文化・投稿および外部公開等に研究費の使用を予定している。
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