2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K11845
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
上住 円 (池本円) 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (70435866)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 老化 / 骨格筋 / 神経筋疾患 / 神経筋接合部 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経筋接合部 (NMJ) は正常な神経・筋活動に必須のシナプスであるが、様々な神経・筋疾患ではNMJの変性が生じる。中でも、老化による筋の衰弱(サルコペニア)において、NMJの変性は病態に寄与する重要なファクターと考えられている。我々は、これまでの研究から、MFG-E8 (Milk Fat Globule Epidermal Growth Factor 8) が、加齢によりNMJで異常蓄積することを見出しており、その異常蓄積が加齢による運動神経の脱落原因となることを明らかにしている (Aging Cell. 21(1):e13536, 2022)。また、筋ジストロフィーにおけるNMJ変性の際にもMFG-E8の異常蓄積が生じることを認めている。よって、MFG-E8は神経・筋疾患病態に寄与する新たな因子と考えられ、本研究では、サルコペニア及び筋ジストロフィーを対象に、MFG-E8の異常蓄積の抑制に取り組み、その治療効果を検証する。また、MFG-E8の異常蓄積がどのように疾患の発症につながるのか、その過程の細胞・分子レベルの変化を解析し、発症を導くメカニズムを明らかにする。今年度は、マウスの老化過程、および、筋ジストロフィーマウスの発症過程において、NMJにおけるMFG-E8の発現を経時的に調べ、MFG-E8の蓄積が始まる正確な時期を決定した。次年度以降は、今年度明らかにしたMFG-E8蓄積開始前から、老化マウス、および、筋ジストロフィーマウスにMFG-E8の阻害抗体を投与し、異常蓄積やNMJ変性に対する治療効果が見られるか否か検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、サルコペニア(老化マウス)、および、筋ジストロフィーモデルマウスを用いて、MFG-E8の異常蓄積の抑制に取り組み、その治療効果を検証する。そのために、今年度は、マウスの老化過程、および、筋ジストロフィーマウスの発症過程において、NMJにおけるMFG-E8の蓄積開始時期を特定し、次年度以降に実施するMFG-E8阻害抗体投与による治療効果の検証につなげることができた。また、今年度、実施予定であった、MFG-E8ノックアウト筋ジストロフィーモデルマウスにおけるNMJ変性抑制効果の検討においては、研究代表者の研究機関移動により、一旦、実験を中断する必要があったため、少し進捗が遅れているが、この点を鑑みても概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、サルコペニア及び筋ジストロフィーを対象に、MFG-E8の異常蓄積の抑制に取り組み、その治療効果を検証する。また、MFG-E8の異常蓄積がどのように疾患の発症につながるのか、その過程の細胞・分子レベルの変化を解析し、発症を導くメカニズムを明らかにする。そのために今後は、サルコペニア(老化マウス)、および、筋ジストロフィーモデルマウスを用いて、以下の解析を行う。 1. MFG-E8の阻害抗体投与によって、MFG-E8の異常蓄積を抑制できるか、また、NMJの変性を抑制できるか、について検討する。 2. MFG-E8ノックアウトマウスと筋ジストロフィーモデルマウスを掛け合わせ、筋ジストロフィーで見られるNMJの変性を抑制できるか、について検討する。 3. MFG-E8はターミナルシュワン細胞 (tSC) に蓄積し、その機能を変化させ、NMJの変性を誘導すると考えられる。そこで、MFG-E8蓄積によるtSCの変化を精査することで、MFG-E8蓄積からNMJの変性に至るメカニズムを明らかにする。
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Causes of Carryover |
今年度、実施予定であった、MFG-E8ノックアウト筋ジストロフィーモデルマウスにおけるNMJ変性抑制効果の検討において、研究代表者の研究機関移動により、一旦、実験を中断する必要があった。そのため、表現型解析を次年度に行う予定であり、その解析費用として次年度使用が生じた。
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Research Products
(3 results)