2022 Fiscal Year Research-status Report
加齢によるスペルミン分解活性化機構解明と新規抗老化物質の創出
Project/Area Number |
22K11860
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Research Institution | Josai University |
Principal Investigator |
植村 武史 城西大学, 薬学部, 准教授 (50401005)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小黒 明広 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (00292508)
古地 壯光 城西大学, 薬学部, 教授 (00302167)
高尾 浩一 城西大学, 薬学部, 教授 (70337484)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ポリアミン / スペルミン / スペルミン酸化酵素 / MDL72527 / 細胞老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
世界的に高齢化が進んだ現在、年齢を重ねてもなお健康で活躍するため、科学的根拠に基づいた、有効な抗老化技術が求められている。本研究は、加齢によるポリアミン代謝の変化と細胞老化の関係を明らかにし、新機構老化技術の創出を目指す。 ポリアミンは、全生物種の細胞に含まれるプトレスシン、スペルミジン、スペルミンなどの生理活性物質の総称であり、細胞の増殖や機能維持に必須の因子である。近年、加齢によ ってポリアミンが減少することが明らかになり、ポリアミン不足が細胞老化の原因として注目されてきた。一方、申請者は、スペルミンが分解される際に有害なアクロレインが生成されて細胞傷害が生じることに着目し、加齢によってスペルミン酸化酵素(SMOX)の発現が増加することを見いだした。しかし、SMOX 発現上昇の分子機構や老化への関与は明らかではない。 2022年度は、老化モデル細胞を樹立し、ポリアミン代謝阻害が細胞老化に与える影響を解析した。 老化モデル細胞では、スペルミン酸化酵素 SMOX が上昇し、スペルミンの分解に伴い生成するアクロレイン付加蛋白質が増加した。ポリアミン代謝酵素阻害剤 MDL72527 処理細胞では、アクロレイン付加タンパク質の増加は抑制されていた。MDL72527 を添加して培養した細胞では、細胞老化の指標であるβGal 活性、DNA損傷、ミトコンドリア活性の減少は抑制された。以上の結果より、ポリアミン代謝酵素阻害剤によりスペルミンの分解を抑制すると、細胞老化を制御できる可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
長期培養により老化表現形を示す老化モデル細胞を樹立できた。ポリアミン代謝酵素阻害剤により細胞老化が抑制され、ポリアミン代謝酵素阻害剤が新機構老化物質である可能性が示された。この系を用いて解析を行うことにより、研究期間内に研究目的を達成できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
スペルミン酸化酵素が細胞老化に重要な役割を果たすことが明らかになったので、スペルミン酸化酵素を標的とした抗老化物質の探索を行う。現在、数種の阻害剤候補を試したが、細胞毒性が高く、実用化には誘導体化などの毒性低減の工夫が必要である。引き続きスペルミン酸化酵素阻害剤を探索すると共に、老化によるスペルミン酸化酵素発現上昇機構を明らかにし、新たな標的分子を同定する。
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Causes of Carryover |
細胞老化へのポリアミン代謝の影響は、ポリアミン分解酵素阻害剤により有効な結果が得られている。しかしながら、阻害剤の予期しない標的外効果が指摘された。そこで、スペルミン酸化酵素SMOXを特異的にノックダウンまたはノックアウトし、細胞老化へのSMOXの影響を直接評価する実験を追加した。そのため、2022年度に予定していたSMOXの発現に関わる因子の予備調査を2023年度に実施することとした。
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Research Products
(4 results)