2023 Fiscal Year Research-status Report
プレバイオティクス含有栄養剤と医薬品の相互作用の解明
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22K11862
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
唐沢 浩二 昭和大学, 薬学部, 准教授 (90595951)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千葉 正博 昭和大学, 薬学部, 教授 (80286814)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | プレバイオティクス / 相互作用 / 医薬品の吸収阻害 / 栄養サポートチーム / 食物繊維 / ワルファリン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の実施状況として、「①後向きコホート研究を行いプレバイオティクス含有栄養剤により薬物動態パラメータが変化する可能性が高い医薬品を抽出」については、データを1年分追加して2018年4月から2022年12月に昭和大学病院に入院していた症例を調査した。その結果、プレバイオティクス含有栄養剤の中でも、とろみ調整剤がワルファリンの吸収に影響を及ぼしている可能性が示唆された。入院中にワルファリンが投与された1315症例のうち、栄養剤とワルファリンを併用していた68症例について、とろみ調整剤31例、その他の栄養剤37例を解析した結果、とろみ調整剤を使用していた群でPT-INRの数値が有意に低下していた。 このことから、「②in vitroでプレバイオティクスへの医薬品の吸着率を解析する。」についての基礎的な研究を実施した。 方法は、臨床的に汎用されるプレバイオティクスを水で調製し、ワルファリンと混合した後、ろ過により得られたろ液を試料とした。試料を希釈してLC-MS/MS System測定しワルファリン濃度を算出した。プレバイオティクスは14種類を用いて検討した。各種プレバイオティクスとワルファリンとの混合後、ワルファリンの残存率が低下したのは、グアーガム、キサンタンガム、ペクチンであった。これら3種類のプレバイオティクスは、混合直後からワルファリンの残存率が50~65%程度となった。また、プレバイオティクスの濃度が増えると、ワルファリンの残存率がさらに低下することが示された。 令和6年度は、服用後を仮定してpHを変化させた人工体液(人工胃液、人工小腸液)との混合調査を実施し、ワルファリンの残存率を確認する。 なお、本研究の一部を「第33回日本医療薬学会」および「日本薬学会第144年会」にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度に実施した臨床研究「①後向きコホート研究を行いプレバイオティクス含有栄養剤により薬物動態パラメータが変化する可能性が高い医薬品を抽出」について、とろみ調整剤とワルファリンの併用により、PT-INRが有意に低下している結果が得られた。その客観的事実を確認するために、令和5年度後半で基礎研究「②in vitroでプレバイオティクスへの医薬品の吸着率を解析する。」において、14種類のプレバイオティクスとワルファリンの吸着実験をを行った。その結果ワルファリンの残存率が低下したのは、グアーガム、キサンタンガム、ペクチンであった事実を確認することができた。 令和5年度は水溶液中の吸着実験を行ったが、令和6年度では人工体液中を用いて研究を進められることになったことから、おおむね順調に進展していると考えられる。 令和6年度では、引き続き臨床研究として症例解析も進める。また、基礎研究としての吸着実験は、ワルファリン以外にもタクロリムスなどのTDM対象医薬品も実施する予定である。引き続き研究室に設置されている遠心機、HPLC、LC-MSMSなどを用いながら濃度を測定していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は順調に進行していることから、当初の予定通り実施していく予定である。 つまり、令和6年度では、令和4年度から開始した「①後向きコホート研究を行いプレバイオティクス含有栄養剤により薬物動態パラメータが変化する可能性が高い医薬品を抽出する。」を継続的に調査し、さらには基礎研究として「②in vitroでプレバイオティクスへの医薬品の吸着率を解析する。」については、ワルファリンとプレバイオティクスの研究を進めるとともに、タクロリムスなどのTDM対象薬品にも研究を広げていく予定である。 本研究結果の一部については、令和6年度の「日本医療薬学会」または「日本薬学会」で研究発表することを目標とする。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、ワルファリンの研究が進んだため集中して行ったことで、その他の医薬品をほぼ購入しなかったことが挙げられる。次年度使用額(70119円)は、ワルファリン以外のTDM対象医薬品やプレバイオティクスの試薬としての物品費として使用予定である。 令和6年度では、間接経費を引いた870119円については、基礎研究を実施するためのHPLC、LC-MSMSなどの固定相、移動相、バッファー、そして吸着実験を行うためのカラム、チューブ、チップ、医薬品(TDM対象医薬品であるタクロリムス、バルプロ酸ナトリウムやボリコナゾールなどの標準品、ワルファリンの標準品)に使用予定である。 また、学会発表時の参加費、旅費にも一部使用予定である。
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