2022 Fiscal Year Research-status Report
個体のエネルギー摂取不足は卵子の発育に影響するのか?
Project/Area Number |
22K11865
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Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
川上 心也 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 講師 (60410271)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 卵母細胞 / 痩せ / 摂食制限 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、摂食制限により生じる個体の痩せが、卵子における各種細胞小器官の形態や機能に影響を与えるか否かを検討するために計画された。令和4年度は、対象となるラット個体において、どの程度のエネルギー摂取量の低下が個体の栄養不良を引き起こし、かつ、排卵された卵子の受精能や発生能が影響を受けるか否かについて検討した。 その結果、摂食制限によりエネルギー摂取量を25%ないし50%制限させた場合には、体重は統計学的に有意に減少したものの、血清生化学検査の結果から各個体が栄養不良の状況にあるとは断定できなかった。排卵卵母細胞の体外受精・体外培養による発生能は、25%摂食制限群で発生4日目の桑実胚の割合が、自由摂食下にある対照群および50%摂食制限群よりも増加する傾向が認められ、初期発生段階における卵割が速く進行すると推察された。一方、各群から得られた排卵後の卵母細胞における、体外培養下での受精能については、摂食制限による影響は認められなかった。 従って、本研究の実験条件では、摂食制限によるラットの栄養不良状態は認められなかったものの、軽度の摂食制限は、卵巣内の卵母細胞に後の発生能に関する影響を与えることが推察された。これは、個体の栄養状態が引き起こす胎児や産子への影響が、妊娠以前の卵巣内の卵母細胞にも及んでいるとの可能性を示唆する。なお、卵母細胞の受精能や発生能は、より厳しい栄養条件であるはずの50%摂食制限群では明確な影響を認めず、発生の進行速度は自由摂食下にある対照群と50%摂食制限群で同様の傾向であった。従って、25%といった比較的軽度な摂食制限が、卵母細胞の発生能について有利な影響を与えた可能性も考えられるが、現時点では断定できない。この点については引き続き検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の実験条件である50%の摂食制限では、血清生化学検査の結果、体重は減少しているものの栄養不良状態とは認められず、さらに、50%摂食制限群から得られた卵母細胞では、受精能や発生能にも影響は認められなかった。本研究では、個体に明確なカロリー摂取不足による栄養不良の兆候が認められた条件下で採取された卵母細胞における受精能や発生能、ないし細胞小器官への影響を調べたいため、より強度の摂食制限を検討する必要がある。本来であれば、令和4年度までに適切な摂食制限の条件を決定する予定であったが、現状では明確な条件が未確定であることから、進捗はやや遅れていると判断した。 しかしながら、当初から令和5年度に実施予定であった、採取された卵母細胞の各種細胞小器官が摂食制限により受ける影響については、より強い摂食制限の条件設定の検討と並行して検討を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初から予定していた、摂食制限が卵母細胞の各種細胞小器官に与える影響の検討については、予定通り令和5年度から実施する。これと並行し、個体に明確なカロリー摂取不足による栄養不良の兆候を認める摂食制限の条件の検討も引き続き実施する。 前者の各種細胞小器官に与える影響の検討では、卵母細胞の核と紡錘糸の形態、および、ミトコンドリア、小胞体、ゴルジ装置の分布といった、各種細胞小器官の形態や分布の変化が、摂食制限によりどのような影響を受けているのかを調べる。これらの観察には、卵母細胞を3次元的に記録できる蛍光顕微鏡(キーエンス社、BZ-X800)をリースし使用する。 後者の摂食制限条件の検討については、令和4年度と同様、各種条件で飼育したラット個体の血液を採取し、血清生化学検査により栄養状態を確認するとともに、排卵された卵母細胞を体外受精・培養することで受精能や発生能を確認し、摂食制限が卵母細胞に与える影響について検討する。
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Causes of Carryover |
令和4年度には、摂食制限におけるラット個体の栄養不良条件の検索に時間を要したとともに、想定外の学生指導に関連する業務が増加したこともあり、本研究に充てられるはずであったエフォートの減少が次年度使用額の発生につながったと考えている。 令和5年度の助成金使用計画は以下のとおりである。当初は、卵母細胞を3次元的に記録できる蛍光顕微鏡(キーエンス社、BZ-X800)を半年間リースし使用する予定であったが、次年度使用額を加算し、リース期間を延長して使用する。また、令和5年度も卵母細胞の体外受精並びに体外培養を実施することから、これらに必要な培養液、培養器具類などを購入し使用する。さらに、当初の予定通り、蛍光観察に必要な蛍光染色用キットを購入し使用するとともに、ラット個体の栄養状態の把握を目的とした血液成分の生化学分析も引き続き外部業者に依頼し実施する。
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