2023 Fiscal Year Research-status Report
回路計算量理論に基づく視覚探索を実現するニューラルネットワークの計算原理の解明
Project/Area Number |
22K11897
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
内沢 啓 山形大学, 大学院理工学研究科, 准教授 (90510248)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 回路計算量 / 生体情報処理 / ニューラルネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は昨年度に得た知見を基に、神経回路網の理論モデルであるしきい値回路、および生体情報処理に関連のある論理関数である Coincidence Detection関数(CD関数)について研究を行った。その結果、CD関数の入力の規模nと、CD関数を計算する任意のしきい値回路Cの素子数s、段数d、エネルギーe、重みwの間に、n <= ed (log(s) + log(w) + log(n))なる関係式が必ず成り立つことを証明した。すなわち、規模の大きいCD関数をしきい値回路で計算するためには、段数dあるいはエネルギーeを大きくすることが、素子数sや重みwを大きくするよりも有効であることが分かった。また、同様の関係式はシグモイド回路やReLU回路でも成り立つことも証明した。これらの結果は、フランスで開催された査読付き国際会議 The 48th International Symposium on Mathematical Foundations of Computer Science に受理され、現地で研究報告を行っており、さらに学術雑誌Neural Computationに採録が決定している。 また上記の結果に加えて、AND素子、OR素子、NOT素子から論理回路Cについても研究を行い、エネルギーeの論理回路Cは、高々2^O(e log(e))個の出力パターンしか持てないことを証明した。一方で、しきい値回路はこの値よりも真に大きい出力パターンを保持できるため、この結果は、エネルギーが制限された状況下でのしきい値回路の優位性を示す結果といえる。この結果は、香港で開催される査読付き国際会議Annual Conference on Theory and Applications of Models of Computation に受理された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
回路計算量の視点から、脳が実現する生体情報処理に関連のあるタスクに対して、神経回路網の理論モデルであるしきい値回路が満たさなければならない関係式を具体的に導出することができ、さらにその結果を神経科学の分野で権威のある学術誌にて発表することができたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度に得た結果に基づいて、様々な生体情報処理に関連するタスクを定式化し、同様の関係式が成り立つのかを検証する。これにより、神経回路網にとって段数とエネルギーが素子数と比較して計算能力に対する優位な計算量であるかを検証する。また、本年度に得た関係式が、入力に対して確率分布を導入した際にも成立するのかを検証する。
|
Causes of Carryover |
予定していた国際会議での発表経費が想定より少なかったことにより、次年度使用額が生じた。翌年度の助成金と合わせて、国際会議での発表経費として使用する。
|