2022 Fiscal Year Research-status Report
同種写像の様々な性質を活用した暗号設計とその安全性解析
Project/Area Number |
22K11912
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
高島 克幸 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (70723964)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 同種写像暗号 / 耐量子計算機暗号 / 超楕円曲線 / Richelot同種写像 / 高機能暗号 / 関数型暗号 |
Outline of Annual Research Achievements |
同種写像を用いた暗号技術は,量子計算機に対しても安全な暗号として広く研究が進められている.2022年7月,8月に,同種写像を用いたSIDH鍵共有法に対して一連の新しい攻撃法が発表された.そこでは高種数の代数曲線や高次元アーベル多様体といったこれまでは脇役であった数学が重要な役割を果たしている.この最近の研究進展を受けて,新しい暗号数理の研究が活発化している.本攻撃法の有効性を見積もるために,そこで使われている同種写像グラフの数学的な特性を明らかにする研究の重要性が増している.また,2020年にも,CostelloとSmithによって高種数代数曲線の場合の同種写像暗号に対する攻撃法の研究が行われていた. 数理解析研究所講究録別冊で2022年度に出版された種数2曲線上のRichelot同種写像に関する論文では,Richelot同種写像によって得られる同種写像グラフの数理を明らかにしており,上記の攻撃法と密接に関係する研究成果である.具体的には,種数1楕円曲線の積に分解する特別な部分グラフの構造に関する解析をまとめている.我々はこれまでこの部分グラフの数理に関して,計算数論の国際会議 ANTS 2020 などで発表してきたが,今後の暗号解析に使いやすくすることを目指して,本論文では,それらの成果をまとめている.また,Costello-Smithの同種写像問題攻撃法においても,この部分グラフは重要な位置づけを有している.さらに種数が3以上の代数曲線の場合のRichelot同種写像グラフについても研究を進めており,2023年夏の応用数理国際会議 ICIAM 2023 で成果発表を行う予定である. また,今年度,広く暗号応用が期待される重み付き属性和に関する関数型暗号をペアリング演算に基づいて構成し,国際会議 ASIACRYPT 2022 で成果発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績欄に記載したように,2022年度は,同種写像暗号研究において,大きな節目になる年であった.そこでは,我々がこれまで研究してきた種数が2以上の代数曲線間の同種写像が,今後の同種写像暗号研究において重要な役割を果たすことが示された.従って,あまり大きな軌道修正をすることなく研究を進めていくことで問題なく,進捗状況はおおむね順調に進んでいる.むしろ,これまでの我々の研究を後押しする方向で研究動向が進んでいるため,これまでの研究計画に沿ってこれからも研究を進めていく予定である.特に,これまで,同種写像を暗号に活用するために,その同種写像グラフの構造解析に関して一つずつ研究を積み重ねてきたので,これからも継続して同種写像グラフの構造解析を進めていく予定である. これからは,暗号応用にも注力して進めていく予定であるが,最近進展した新しい攻撃法がもたらす安全性指標に関しては,今後,慎重に解析していく必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,まず,応用数理国際会議 ICIAM 2023 において,高種数代数曲線の場合の同種写像グラフの解析について研究発表する予定なので,それに向けてさらに同種写像グラフの解析を進めていく.また,これらの結果とも関連して,従来の同種写像暗号構成の再検討を進めると共に,新しい方式設計につながる暗号解析を深めていくことを目指す. また,同時に,ペアリング演算も活用した同種ペアリング群の構造に基づいた暗号設計の可能性を探ると共に,その安全性評価も行っていく予定である.
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Causes of Carryover |
2022年度は理論的な解析に注力し,高性能計算機を使っての計算機実験やデータ収集を必要としなかったため,物品費が当初の予定より大幅に下回った.また,コロナ禍により出張費用も低く抑えられたため旅費も予定より下回った.次年度は,計算機実験も研究に取り入れていく予定であり,また徐々に出張も行っていく予定なので,当初の予定通り物品費や旅費などに使用する予定である.
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