2023 Fiscal Year Research-status Report
量子力学的特性を利用したデータセキュリティ技術の創出
Project/Area Number |
22K11914
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
桑門 秀典 関西大学, 総合情報学部, 教授 (30283914)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣瀬 勝一 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (20228836)
満保 雅浩 金沢大学, 電子情報通信学系, 教授 (60251972)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 量子計算機 / 量子データ / Grover探索アルゴルズム / 倍ブロック長圧縮関数 / 振幅符号化 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在の計算機を超える演算能力をもつ量子計算機に注目が集まっているが、本研究では、量子計算機の演算能力ではなく、演算の対象である量子データに着目する。アプリケーションで扱う量子データを保護するための暗号理論は、ディジタルデータ用の暗号理論と比較して、十分ではない。例えば、ディジタルデータの量子データへの符号化法が多様であることが考慮できていない。本研究は、量子データの量子力学的特性を積極的に活用した暗号理論を創出する。今年度は、研究計画調書に記した「方式A」、「方式B」、「方式C」についてそれぞれ取り組んだ。 方式Aについて、計算基底符号化以外の符号化法を検討した結果、安全性解析にしばしば用いられるGrover探索アルゴリズムとの整合性が悪いことがわかった。一方、計算基底符号化以外の符号化法の一つである振幅符号化法における振幅埋め込みのための前処理法を提案した。これは、量子機械学習の分野にも適用できる前処理法であり、査読付き国際会議に採択された。 「方式B」では、 メッセージと認証タグの全ての組の重ね合わせ状態を使った量子メッセージ認証コードの構成法の創出を目指し、検討した。昨年度、メッセージ認証コードに用いる倍ブロック長圧縮関数の安全性を解析した結果、ランダムオラクルhと非暗号学的involutiuon pを用いた倍ブロック長圧縮関数は、量子衝突困難性が最良となる反復形ハッシュ関数が構成できることを証明した。今年度、その成果を査読付き論文誌に投稿したところ、その証明に加筆が必要であることを査読者から指摘され、証明の可読性を改善した結果、採択された。 「方式C」については、古典的な再生成符号の構成法は古典的な線形誤り訂正符号の構成法と似ているため、量子誤り訂正符号の分野で、関連する研究の文献調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で述べたように、方式Aに関連する成果が査読付き国際会議に採択され、方式Bに関する成果が査読付き学術雑誌に掲載された。また、各方式の考案、安全性証明及びそれの機械的な検証を可能にする計算機・文献等の研究環境の整備も進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、「量子データを保護するための量子力学的特性を活用した暗号理論の創出」であり、研究計画書に記した「方式 A」、「方式B」、「方式C」の創出及びそれらの安全性の解析である。方式Aについては、計算基底符号化以外の符号化法と安全性解析に利用される量子アルゴリズムとの整合性を図り、符号化法の前処理についても、引き続き検討する。方式Bについては、今年度の成果に基づき、より多機能な秘匿・認証機能をもつ暗号プリミティブの安全性を量子アルゴリズムの観点から検討を進める予定である。また、以前に我々が提案したWhite-box Modelブロック暗号の安全性の証明に取り組む。方式Cについては、古典的な秘密分散法の欠点を改善するために古典的な再生成符号が考案されたことから、量子秘密分散法の観点から研究を進める。
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Causes of Carryover |
校務の都合で予定していた学術会議に参加できなかったことにより、旅費等に残額が生じた。次年度は、校務と学術会議の時期の調整を入念に行い、計画に則した予算執行に努める。
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