2023 Fiscal Year Research-status Report
超伝導単一磁束量子回路向け新機軸算術演算回路とその設計自動化の探求
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22K11961
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
鬼頭 信貴 中京大学, 工学部, 准教授 (90630997)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 単一磁束量子回路 / 算術演算回路 / 設計自動化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は超高速かつ省エネルギな論理回路を実現可能なデバイスである超伝導単一磁束量子(RSFQ)回路を対象として、その性質を活用した新機軸の算術演算回路の開発と、RSFQ回路の自動設計手法の開発を目的とする。RSFQ回路が電圧パルスを用いる性質を新機軸の演算手法にくみあわせることでコンパクトかつ高性能な回路の実現を目指す。 本年度は以下の3点に関して研究を進めた。 1. 確率を用いて算術演算を行う手法であるストカスティックコンピューティングをRSFQ回路で実現するにあたり、前年度考案した計算クロックサイクル数を削減するための部分多重化手法の拡張を行った。また、ストカスティックコンピューティングにおいて演算ビット数が大きくなると演算に必要なクロックサイクル数が指数関数的に増大する問題にとりくみ、乗算に対してこの問題を解決する新手法の開発を行った。 2. RSFQ回路において信号遅延時間の調節や信号分岐に用いられるジョセフソントランスミッションライン(JTL)配線の自動化手法を提案した。RSFQ回路のセルベースレイアウト設計では、事前に用意された様々な形状・遅延時間のJTL配線セルをタイルのように並べてJTL配線を実現する。入力として与える制約条件に合う配線セルの配置を探索する問題を整数計画問題として定式化することでこの作業を自動化する手法を提案し、ツールとして実現した。また提案手法の国際会議発表を行った。 3. 以前より研究を続けているRSFQ回路向けのテクノロジマッピング手法について、新たな方式を考案した。各論理ゲートに対してクロック信号が必要で、クロック信号の分配数が大きくなりがちなRSFQ回路において、クロック信号が不要なクロックレスゲートをより効果的に用いることでクロック信号が必要なゲートを従来法より削減する。この方式について国際会議発表の投稿をおこない採択された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RSFQ回路の特徴を生かした新機軸の演算回路を複数考案でき、考案した演算回路の一部はすでに国際会議論文としてまとめることができている。このほか、RSFQ回路向けの設計自動化アルゴリズムについて、小規模回路向け・大規模回路向けのどちらについても設計自動化手法を提案でき、査読付き学術論文や国際会議論文としてまとめ上げることができているため。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度に手法の考案までたどり着くことのできたビット幅の広いストカスティックコンピューティング演算を少ない演算サイクル数で実現する演算手法を洗練させる。また、通常各ゲートにクロック信号が必要なRSFQ回路において、クロックレスゲートを導入することでクロック配線を削減し小面積化するテクノロジマッピング手法についても研究を進める。
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Causes of Carryover |
初年度において、新型コロナウィルス感染症のため国内学会の開催がオンラインに切り替えられるなど国内旅費の使用額が当初の想定よりも少なくなったことから未使用額が生じ、2023年度へ繰り越しとなっていた。 本年度は増加した現地開催の学会の参加にこの未使用額を使用した。しかし、研究の計画時点で想定されていなかった物価上昇や、参加予定の国際会議にかかわる出張費用の高騰が予想されたため、2024年度へ一部を繰り越した。
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