2022 Fiscal Year Research-status Report
精度保証のある高精度数値計算のための並列処理による高速化
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22K11978
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
川端 英之 広島市立大学, 情報科学研究科, 准教授 (00264937)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 並列処理 / データフロー処理 / マルチコアプロセッサ / 多倍長浮動小数点演算ライブラリMPFR / 多倍長区間演算ライブラリMPFI / 任意精度演算ライブラリIFN |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,多倍長演算ライブラリや任意精度保証計算ライブラリを用いた高精度数値計算の高速化を目的としている.特に,高並列マルチコアプロセッサ環境を活かした並列処理による高速化の可能性を追求する.本研究で得られた知見は我々が取り組んでいる任意精度保証演算ライブラリIFNの高性能化に活かすことを想定している. 初年度である令和4年度には,区間演算ライブラリMPFIを用いて記述された数値計算プログラムに対し,データフローグラフ構築とそれに基づく並列性抽出の効果確認および性能向上のための検討を行った.データフローグラフを用いた並列処理は,明示的な並列処理記述と比較して高い並列性の抽出が期待できる一方で,データフローグラフ構築や並列処理制御のオーバヘッドの高さによっては並列処理効率を高く保つことは容易ではない.我々は,予備実験の結果,並列処理の単位を小さくし過ぎず,多倍長演算による区間演算とすることが効果的であるものの,データフローグラフ構築にかかるコストが無視できない点を確認している.これを踏まえ,初年度には,高い並列処理効率を目指し,プログラム中の一部の数値演算のみを展開してデータフローグラフを構成してそれをプログラム中の複数箇所の並列処理制御に利用する手法を検討した.システムのプロトタイプを開発し,複数の数列の並列計算を題材とした実験により,一定の効果を確認した.様々な数値計算アプリケーションのデータフローのパターンに本手法を対応させる方法の検討が次の課題である. 本年度には,本研究の最終的な目的の一つであるIFNの高速化に関連して,区間演算方式の変更や任意精度保証のための再計算手法の改善による所要メモリ量削減と高速化に関する研究についても進展が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で取り組む項目として予め挙げている項目,すなわち,(1)区間演算に対する並列処理の効果検証(要素演算,融合演算,投機処理),および(2)区間演算の展開による高並列データフローの抽出と中粒度並列処理による高速化の効果検証,に対し,実際に取り組めたのは項目(1)の一部に止まった.より踏み込んだいくつかの実験を行う予定であったが,予定通りには進まなかった.一方,本年度に明確に予定していなかった項目として,数値計算ライブラリIFNに対するメモリ効率改善に関する若干の進展が得られた.総合的にみて,令和4年度の進捗はやや遅れている程度であると判断する. 進展に遅れがあった理由の一つは,研究におけるプロトタイプ開発のために用いようとした既存の並列処理システムが,改変が容易でない設計であったことが挙げられる.データ構造の再設計等をすることなく既存のものを流用することを徹底しようとしたが,結果的にそれが研究の進展の妨げとなった.問題点は明らかになっているため,それを踏まえたシステムの再設計を急ぐ予定である. 進展に遅れがあった理由としては,研究代表者が5月から9月までのオーストラリア滞在中にエフォートのバランスを予定通り保てなかったことも挙げられる.次年度以降への大きな影響は無いものと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の成果や反省点を踏まえ,次年度以降も同様に,計画に従って研究を遂行する.本研究での評価実験に用いるデータフロー並列処理システムは,初年度のものに対して,多くの箇所に再設計・改善を加えて発展させる予定である.またそれと並行して,部分的に構築したデータフローグラフをプログラム中の複数箇所で並列処理制御に用いる手法に関して,効率的な処理の実現のための条件の検討や,必要に応じたソースコード変換機能やライブラリAPIの設計等を進める. 初年度に手をつけることができなかった項目についても精力的に進める.区間演算を複数融合することの効果の検証や,区間演算を展開して一段階低い要素演算によるデータフロー並列処理の効率・適用可能性の評価について,具体的な成果を得ることを目標とする.
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Causes of Carryover |
令和4年度には研究が一部予定通り進められない時期があった.具体的には,研究代表者が5月から9月までのオーストラリア滞在中に,エフォートのバランスを予定通り保てなかった.また,年度を通して,全国的な物流の事情で電子機器等の備品購入が困難な時期があった.これが要因となり,結果として,予定通りに予算を消費することができなかった. 次年度使用額は大規模なものではなく,令和5年度中の研究経費の計画の若干の変更により対応可能であり,問題は生じないものと考えられる.
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Research Products
(2 results)