2022 Fiscal Year Research-status Report
レジリエントな情報社会のためのデータ駆動型情報流通制御技術
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22K11990
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
津川 翔 筑波大学, システム情報系, 准教授 (40632732)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ソーシャルネットワーク / 情報拡散 / インフルエンサー / コミュニティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、誤情報の流通に起因する社会の混乱を防ぎ、レジリエントな社会を実現することを目指して、社会ネットワーク上での情報流通を適正化するための基礎技術を研究している。 特に2022年度においては、(1) 大規模な情報拡散のきっかけとなる社会ネットワーク上のリンクを特定する手法の有効性を評価する研究、(2) 大規模な情報拡散のきっかけとなるソーシャルメディアユーザーを特定する手法の研究、(3) 情報拡散に影響を与えるソーシャルメディアユーザーのコミュニティを特定する手法の研究、の3つに取り組んだ。 研究項目 (1) では、大規模な情報拡散のきっかけとなるリンクを特定し、そのリンクを通じた情報拡散をブロックすることで、情報拡散の規模をどの程度抑えることができるかを評価した。Twitter の実データを用いた分析の結果、一部のユーザー間の情報拡散をブロックすることで情報拡散の規模を抑える効果は限定的であることを明らかにした。本研究により、従来有望視されていたリンクブロック手法の限界を示した。 研究項目 (2) では、ソーシャルメディアユーザー間の関係を表現したソーシャルネットワークから求めたノード埋め込みの特徴量を用いて、大規模な情報拡散のきっかけとなるソーシャルメディアユーザーを特定する手法を開発した。開発した手法によって、他のユーザーの投稿を大規模に拡散させるブローカーと呼ばれるユーザーの特定を可能にした。 研究項目 (3) では、ソーシャルメディアユーザーのコミュニティを特定する際の適切な前処理の手法を明らかにした。ユーザーのコミュニティは、ソーシャルメディア上での情報拡散に大きな影響を与えることが知られており、本研究の知見は、情報拡散の規模を予測するのに有用であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、大規模な情報拡散のきっかけとなるリンクやユーザーを特定する手法の開発とその評価を実施した。 社会ネットワーク上のリンクブロック手法は、情報拡散の抑制にそれほど有効でないことがわかったものの、改善のための知見も得られた。 また、社会ネットワークの構造から大規模な情報拡散のきっかけとなるユーザーを特定することを明らかにした。 これらを総合して、ソーシャルメディア上の情報流通適正化のコア技術の確立に向けて、概ね順調に進捗していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は特に、情報拡散のダイナミクスを予測するモデルを開発する。グラフニューラルネットワークを用いて、実際の情報拡散の履歴からその将来のダイナミクスを予測するモデルを学習することを検討している。 さらに、その開発した情報拡散ダイナミクスの予測モデルに基づき、大規模な情報拡散のきっかけとなるリンクやユーザーを特定する手法の改良に取り組む。 また、最終年度の2024年度には、実社会に適用可能な誤情報拡散抑制手法の解明に取り組む予定である。そのための基盤として、2023年度には、誤情報の発生、拡散、介入の一連の流れをシミュレーション可能なプログラムの開発に取り組む。
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Causes of Carryover |
2022年度に用いた手法は汎用的な計算機でも動作する軽量なものであったため、専用の計算機を購入する必要がなく、残額が生じた。 残額は、効率的なデータ取得のためのクラウド計算機の利用料の一部として次年度以降に使用する予定である。
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