2022 Fiscal Year Research-status Report
電子回路基板レベルハードウェアトロイの脅威分析と対策技術の開拓
Project/Area Number |
22K12031
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Research Institution | The University of Fukuchiyama |
Principal Investigator |
衣川 昌宏 福知山公立大学, 情報学部, 准教授 (00710691)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 優一 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (60551918)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ハードウェアセキュリティ / ハードウェアトロージャン / 電磁情報セキュリティ / 情報セキュリティ / 情報システム / 電磁環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
情報セキュリティの安全性の基礎であるハードウェアセキュリティに関して、本課題では情報通信機器を含む電子機器(IoT機器や組み込み機器、車載機器、汎用コンピュータなどを含む)への脅威である、情報セキュリティ低下をもたらすハードウェアトロージャン(HT)問題への対策手法の研究開発を進めている。前述の電子機器内部には、機器を構成する電子回路基板が存在しており、これは集積回路(IC)とは異なり、生産拠点からの製品出荷後でも機器を開封することにより容易にアクセスできる。また、電子回路基板の製造外部委託では製造時に第三者のアクセスを許してしまう。これらにより、電子回路基板は製造時からユーザが機器を使用し最終的に廃棄するまで、HTを埋め込まれるリスクが存在している。そのため、情報セキュリティの基礎であるハードウェアセキュリティの安全性を高め、維持するためには、電子回路基板が設計通りの構造を維持していること、すなわち真正性をリアルタイムでモニタリングする必要がある。 この電子回路基板の真正性をリアルタイムでモニタリングする手法は、従来であれば高速・高感度な計測器による、対象となる電子機器を開封した状態での計測が必要であったが、この手法はコスト面、可搬性などの実用面で問題がある。そこで本研究課題では、電子機器の電子回路基板自体に低コストで高感度な真正性確認機構を実装することを最終目標としている。 本年度は、電子回路基板にHTが挿入されることによる、回路配線の電気的特性の変化について調査を進め、攻撃検出手法について研究を進めた。その結果、安価なマイクロコントローラにも内蔵されているタッチセンサ機能を応用することで、微少静電容量・高抵抗計測の手法を実現し、攻撃のリアルタイムモニタリングを可能とする基礎的手法を示した。この成果は国際会議IEEE EMC Europe 2022にて報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、①電子回路基板へ挿入されるハードウェアトロージャン(HT)による脅威分析、②対策技術の開拓の2点について、①については攻撃が想定される回路配線の調査、②については汎用マイクロコントローラでの高感度な真正性確認に関する基礎的手法の開発を完了している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方針は以下の通りである。①電子回路基板へ挿入されるハードウェアトロージャン(HT)による脅威分析については、攻撃者が入手可能であると考えられる半導体部品等を用いて、攻撃対象となる信号の種別を攻撃可能範囲として示すことを目標とする。 ②対策技術の開拓については、現状の汎用マイクロコントローラが内蔵しているアナログ回路だけで無く、さらに適用範囲を広げるためにデジタル入出力端子を用いた計測によるHT・回路改変攻撃検出についてもその可能性について検討を進める。
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Causes of Carryover |
当初購入予定であった高電圧分解能GHz帯オシロスコープは、電子回路基板に実装されたハードウェアトロージャン検出に必要な高い電圧分解能を期待していたが、その測定には微少電荷を計測可能な低容量高入力インピーダンスプローブが必要であることが実験を進めるうちに判明した。これらの機材は本研究課題の予算では高価なため購入できず、この測定系に匹敵する代替案を考案し、研究を続行可能とした。この代替案が安価で高精度な測定が可能であったため、当初予定していた物品費を下回る支出となった。しかしながら、これらの研究成果を国際会議で発表した際に、コロナ禍による航空機減便や燃料費の高騰により旅費が大きく膨らみ、旅費の支出が増加した。これについて、測定系の購入残金を旅費に充当したがそれでも残金が生じている。次年度使用額が生じた理由は、この新規考案した測定系が低コストで高性能であり、研究計画提出時には想定できない成果であったからである。
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