2022 Fiscal Year Research-status Report
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22K12060
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
瀬波 大土 京都大学, 工学研究科, 講師 (40431770)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 局所化学ポテンシャル / リチウムイオン電池 / 領域化学ポテンシャル / イオン移動経路推定 / リチウムイオン伝導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は主に次の2テーマの進展があった。(1)局所化学ポテンシャルの評価における新たな近似手法の開発、(2)リチウムイオン移動経路推定のアルゴリズム開発。 (1)局所化学ポテンシャルの評価における新たな近似手法の開発 局所化学ポテンシャルの評価においては先行研究ではエネルギー密度を電子密度で割るという線形近似が用いられてきた。しかし、局所化学ポテンシャルの本質は電子密度の増加に対するエネルギー密度の変化という微分の概念であり、線形近似は好ましいものではなかった。そこで、最低空軌道に対する軌道とエネルギー密度の比を用いて局所化学ポテンシャルを評価する新しい評価手法を考案した。そして、この新しい近似手法がこれまでの線形近似よりも優れていることを検証するため、Pt原子の2両体のクラスターに対する水素分子吸着とコロネン分子に対するリチウム原子吸着のの2つの現象を研究した。いずれのモデルについても新たな近似手法の方が適切な吸着位置を予言することを確認した。今後はこの近似手法を多くのプログラムでの量子状態計算へと対応させていくプログラム開発を行っていく。 (2)リチウムイオン移動経路推定のアルゴリズム開発 局所化学ポテンシャルによるイオン移動経路推定においては、2点間をイオンが移動する際に局所化学ポテンシャルが低い領域を通っていくと考える。しかし、実際に計算プログラム化する際には、遠くの局所化学ポテンシャルが低い点を通るよりも近い経路で少し局所化学ポテンシャルが高いだけの経路とどちらが得か判断が必要となる。実際にポテンシャルエネルギーを計算すれば設定温度と比較しどちらの経路を選ぶべきかがわかるが、そうすると計算コストが上昇してしまう。そこで、NEB法を模倣し経路を決定するアルゴリズムの考案を行った。今後はこのアルゴリズムの実装を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大学院生2名の協力のもと、本テーマの研究は順調に進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
直近の研究としては、2022年度の研究内容の実装が重要となる。まずは局所化学ポテンシャルを用いてイオン移動経路を自動的に推定するプログラムの実装を行っていく。当面はこれまでも使用しているOpenMXの計算で得られた波動関数を基にイオン移動経路を推定するプログラムの作成を行う。また、局所化学ポテンシャルを線形近似ではなく、最低空軌道の情報を用いてより微分に対応した量を計算するプログラムもOpenMXのアウトプットに対応するようプログラム開発を進めていく。そして、これらの開発されたプログラムを用いてLiPO_4のようなイオン伝導体に対して、イオン移動経路推定結果と既存の方法によるイオン移動経路との比較から低コストイオン移動経路推定手法の実証研究を進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響で予定していた学会がオンライン開催となるなどして旅費の使用が予定より少なかった。また、使用しているスーパーコンピューターの更新年となっていたが、半導体不足のため更新後のスーパーコンピューターの稼働が多いに遅れ計算機使用料が大幅に減ったため。
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Research Products
(12 results)